【建設BIM/DX】施工管理ツールの進化と今後①
日々忙しく施工管理をしていると、担当現場以外の情報を自分から取りに行く機会はあまりないと思います。
2019年から国土交通省が「建築BIM推進会議」という部会を立ち上げ、現在も様々な議論がされていることはご存じでしょうか?
その会議で様々なモデルケースの共有やガイドラインの作成も行われており、ますます議論が活発になることでBIMの存在が大きくなっていくかと思います。
大手以外の会社にとってはまだ先の話なのかもしれませんが、デジタル化が急速に進む昨今において建設BIM・DXの現在地を確認し将来をイメージすることは重要です。
気づいたら業務の変化にどんどんついていけなくなっていた・・・とならないよう今からでも少しずつ知っていくとよいと思いますし、気づきのきっかけとなる記事となれば幸いです。
1回目は施工管理業務で使用されてきた、今までツールの振り返りになります。ご覧ください。
- 既存の施工管理業務に慣れてきて何となく業務している人
- 建設DX・BIMなどのデジタルを用いた業務に興味のある人
- デジタルツールに対応できない高齢社員にもやもやしている人
施工管理ツールを振り返ってみる
私が建設業に従事し始めたのは2000年代中盤からです。この時すでにCADは普及していましたが、研修は手描きでの製図でしたし、現場配属後についた当時30代の上司はCADを扱えませんでした。
「青焼き・第二原図」・・・と聞いて懐かしく思うベテランはいらっしゃるかと思いますが、私もギリギリここからスタートしています。
設備CADに着目すると私が新入社員の頃は「CAD We’ll CAPE」でした。2.5次元CADといって、高さ情報や配管サイズを入力しながら作図することで連動して断面検討もできるといったものです。
建築CADはAutoCADやJWが多かった印象ですが、この辺りは今とあまり変わりませんね。
デジタルカメラに至っては画素数も少なかったですし、携帯のカメラで撮影するものは使えたものではありませんでした。(そもそも折り畳み・・・)
Z世代以降からすると、こんな状態でよく業務やっていたな・・・という感じかもしれませんが、ちなみに私より上の年代になると写真撮影は「写ルンです」でやっていたとのこと。
昭和レトロではありません。平成レトロです(笑)
- デジタルカメラ → 200~300万ピクセル
- 携帯電話 ⇒ 折り畳み式!
- 設備CAD → CAPEなどの2.5次元CAD
- 建築CAD → AutoCAD、JW
施工管理ツールのデジタル化の推移
設備の施工管理だけに着目してもここ数年で3Dでの施工図検討は当たり前になってきましたし、タブレットPCでの品質管理も浸透してきました。
次はどんなものが出てくるのか楽しみ半分・不安が半分といったところですが、まずは近年登場したデジタルツールについて振り返ってみます。
1999年以前
調べてみて意外だったのが、AutoCADは1982年に発売開始しています。普及するまでには時間がかかったようですが、かなり昔からあるのだなと。(1990年入社の上司はまだ手描きだったと言っていましたしね。)
ちなみに図には入れていませんが、1995年にWindows95が発売すると個人用パソコンの普及が急速に進みます。当然マイクロソフトOfficeの普及もこのあたりからですね。
徐々にCADの普及が現場レベルでも進み始め1990年代後半から「JW」「CAPE」「CADEWA」などが登場してきます。
2000年~2009年
2001年には建設サイトがスタート。安全書類をWebサイト上でまとめ、各現場ごとに共通で作成していた書類の手間が削減されます。(ただし最初は無駄に紙ファイルと併用していました。)
設備CADのTfasが2006年に発売されると、設備の納まり検討が3Dになります。
2008年になるとさらに3D向けの設備CADであるRebroが発売。このあたりからBIM(Building Information Modelling)といった言葉をよく耳にするようになり、特に2009年は建設BIM元年と呼ばれているそうです。
そして一般社会にも革新的な変化の起点となったのがスマートフォン、特に2007年のiPhoneの登場です。
情報に関する操作性が一気に向上したことで、データを持ち運んで利用するという概念がこの頃から定着し始めました。
2010~2019年
2010年にはiPadが登場すると、私もiPadを片手にPDF化した図面をタブレット上で確認しながら現場チェックをしていたものです。
2011年には施工管理アプリ「スパイダープラス」が登場。こういったタブレット端末が普及し、使い手が慣れるまでは時間がかかりましたが、今では無くてはならないツールとなっていますね。
この頃からは2000年代に発売されたデジタルツールが業界に浸透し始めます。機能が洗練され、機械にしてもらう仕事が増えてきます。Tfasを例にあげると
- 建築・電気との自動干渉チェック
- ダクト系統の静圧計算とその出力
- 材料の自動集計
など、1つの作業で複数のアウトプットが可能となってきます。
さらに建設プロジェクトの関係各社がそれぞれ使用するデジタルツールに含まれる情報を連携・共有するという文化も徐々に生まれてきます。
その中でも2016年にAutodesk社から発売された「統合版Revit」の存在が大きいと考えます。
元々は建築設計用のRevit Architecture、構造設計用のRevit Structure、設備設計用のRevit MEPと別々のソフトで開発・販売していましたが、これらが統合されAutodesk Revitとして発売されるようになりました。
なおRevitについて内容が濃いものとなりますので、詳しくは別記事にして紹介しようかと思いますが、Revitの普及により意匠・構造・設備をBIMを一つのデータで常にリンクさせながら業務を進めるという土台が出来上がったと言ってもよいでしょう。
2020年~
2020年になると新型コロナウィルス感染症の世界的な流行をはじめ、業界全体の人手不足を相まって業務そのものの在り方はもちろんのこと各個人の人生観・価値観を見直す機会となりました。
特にここで進んだのはリモートワークです。定例会議、安全衛生協議会等が遠隔で開催されるようになり、設計も施工管理もクラウドサーバーに取り込んだデータでどこでも仕事をすることができるようになります。
2010年代中半頃から始まった重機のリモート操作、自動操縦も目立って紹介されるようになりましたね。
現場~バックオフィスの運営の仕方と合わせて、働き方も考える必要が出てくる時代に(ようやく)なったのだと実感します。
- 昔からデジタルツールは多く存在していたが、普及には時間がかかっていた
- 特に2000年代中盤から2010年代中盤までの進化がめざましい
- 情報を出力する→持ち歩く→共有する と利用の仕方が変わってきた
デジタル化の流れは止まらない
今まで多くのデジタルツールが登場し、利用されて浸透し今に至ります。この流れは今後も続いていくでしょう。
これ以上何があるのか?と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、BIMもまだ設計と施工で別々の動きをしていますし、何より深刻な人手不足はおそらくもう解消することはありません。
そして人手不足を解消するためには今まで人間がやっていた仕事を機械に置き換えるしかありません。
昭和から平成にかけては人間が作業するためにデジタルツールを使用して図面を描いたり計算書を作成したりしていましたが、令和の時代は(一部の人には今現在もですが)機械が作業するためのアウトプットが重要になってきます。
施工管理の業務も人間相手の仕事と機械相手の仕事の二刀流で取り組む時代に入り、これは単に仕事の量が増えるというよりも仕事の質がまるっきり変わることを意味します。
人間相手の場合と違って、機械に指示を出すには正確な情報の入力が必要です。また機械に何をしてほしいか、明確な要件定義も忘れてはいけません。
機械は人間と違って忖度したり、意図を汲み取ることはできませんから・・・。
製図ひとつにおいても「図面を描く」ことから「パラメーターを盛り込んだ図面を描く」ことへ認識を変えていかなくてはならないのです。
こういった業務は今までには多くの施工管理にとっては主流ではありませんでしたが、今後求められるスキルの1つになってくるでしょう。
第2回建設DX展
2022年12月に第2回建設DX展で紹介されていたものだけをみても様々な自動化機械が登場していました。参考までにいくつか紹介します。
資材の自動搬送システム、AIでの産廃判別、自動(自走)風量照度測定・風量測定機…第1回のものと比較しても同じものを出しているブースはむしろ少なく、このジャンルの進化の速さを実感しています。
今後も様々な機器が登場すると思いますが、これらが普及してきたときに使いこなせるか?ということが我々施工管理にとっては重要なのだと思います。
まとめ
ここまで施工管理ツールの進化と今後と題して設備施工管理にまつわるデジタルツールの推移について紹介してきました。
あらためて整理して眺めてみると、デジタルツールは時代の流れに乗りながら進化を続けているのが分かると思います。
決して突然新しいツールが出てきたわけではないのです。
人にもよりますが、多くのベテランの方々で
「もう最近のツールにはついていけない」
とか
「新しいことを覚えられない」
と発言されるのを耳にします。そして若手がベテランのフォローをしながら業務を進めて・・・
今はベテランの知識の提供と若手のフォローが釣り合っている段階で、お互い様と言えるのかもしれません。
しかし今後はデジタルに関する知識がより求められ、機械に任せる仕事が増えてくることでベテランの知識を活用する範囲が狭くなるとどうでしょうか?
デジタルツールに対応できないベテランは老害一直線です。
そうならないためには常に目の前の業務だけではなく、業界全体でどういった取り組みをしているか?少し下の世代でもいいのでどういった機器を駆使しているのか?観察することが大事だと思います。
今の30代、40代が率先してデジタルツールの進化に目を向けて業務に取り組んでいくことを願います。