【検査の心得】設備検査を上手に乗り切ろう
建設プロジェクトにおいては工程ごとに進捗と出来栄えを確認する検査があります。ひとことで検査といっても様々な種類があります。
検査を受験するにあたって現場をまとめ、帳票を整理し、受験したら指摘箇所を是正。というのはどんな検査でも同じかもしれません。
しかし検査はそれぞれ目的が異なるので全て同じような対応をしていると最後に痛い目をみます。
最後に起こる大きな問題というのは必然的でもあり、逆に言うと検査を上手に乗り切ることで様々な問題を解決する機会と捉えることもできます。
ここではサブコンの施工管理として受注先のゼネコンから検査を受ける場合のポイントを紹介していきます。
それぞれの検査の目的ポイントを抑えることにより品質が良く、手戻りも少ない現場運営を行う事ができますのでぜひ参考にしてください。
- すべての検査を同じ心構えで受験している
- 完成検査で指摘が多く、稀に大きな問題が発生する
- 特に共通事項が多い
設備検査の種類
サブコンの施工管理として受注先のゼネコンから受験する検査は順を追って大まかに以下になります。
- 事前検討会
- 中間検査
- 完成検査
このあたりは皆さんご存じかと思いますが、実は全部の検査を必ず行わないといけないわけではありません。(請負契約に記載している場合もありますが。)
しかしこの中に1つだけ法律で定められた検査がある、というのはご存知でしょうか?
行政検査の類ではありません。
何となく予想がつくかもしれませんね。そう、それは完成検査です。
法律で定められた検査
請負契約に含むか否かによらず、建設業法第24条の4には「検査及び引き渡し」について記載があります。
第二十四条の四 元請負人は、下請負人からその請け負つた建設工事が完成した旨の通知を受けたときは、当該通知を受けた日から二十日以内で、かつ、できる限り短い期間内に、その完成を確認するための検査を完了しなければならない。
2 元請負人は、前項の検査によつて建設工事の完成を確認した後、下請負人が申し出たときは、直ちに、当該建設工事の目的物の引渡しを受けなければならない。ただし、下請契約において定められた工事完成の時期から二十日を経過した日以前の一定の日に引渡しを受ける旨の特約がされている場合には、この限りでない。
工事を完成させて引き渡すにあたり、元請負人から検査を受けなさい。ということで、サブコン側からすれば2次請負業者に対して行う検査も同様のことが言えます。
20日以内という期限もあります。いつまでたっても検査を行わない状態だとすると支払いを受けることができなかったり、引き渡すまで設備を保管しておかなければいけないためです。
法令上、品質に間違いのないよう元請負業者に引き渡すための検査が完成検査。この完成検査に向けて、他のゼネコン検査を受験するということを覚えておきましょう。
検査は1つ1つ完結するのではなく、完成検査に向けて続いているのです。
- 完成検査は建設業法上実施しなければならない
- 中間検査や事前検討会は任意(あるいは契約上の出来高検査の類)
- 下請けに対して実施する社内の完成検査も同様の意味合い
事前検討会
まず現場に着任して間もなくすると事前検討会を行います。
事前検討会の目的
事前検討会では設計図書の不整合や問題点の洗い出し、作成した施工計画の妥当性、設備の納まり上重要となる部分の検討(基準階・外構・PS・機械室・屋上等)を主に行います。
ここでのポイントは検討会までに問題の洗い出しだけではなく、問題点を建築と擦り合わせ、定例会議等で承諾を得るまで業務を進めることです。
- 実施時期:担当者の着任後に速やかに(耐圧盤打設の時期)
- 目的 :設計変更点・問題点を洗い出し、方向性まで確認
- 確認事項:外構・基準階・PS・機械室・屋上・施工計画全般
事前検討会までで現場の8割は決まる
何を言っているか分からない人もいらっしゃるかと思います。こちらについては別記事の「【ゼネコンとサブコンの違い】建築設備の施工管理は本当に激務? ~業務のペース配分の仕方~」も参考にしてください。
現場の大変さ、皆さんもよくご存じかと思います。では何が大変なのでしょうか?
日中は現場確認をし→夕方から打ち合わせを行い→夜に翌日の準備。
設備の施工管理は主にこういったサイクルで定時帰りなんて夢のまた夢・・・と実感している方は多いかと思います。
ですが、施工が始まってからの検討・打ち合わせを極力無くすことで現場の段取りと確認だけになります。
施工が始まる前にできるだけ検討する人員を増やしてどんどん進めてください。結果的に現場にかかる人員はそちらの方が断然少なくなります。
施工が始まったら現場のことだけ。こちらの方が精神衛生上も健全です。是非スタートダッシュを合言葉に検討を進めましょう。
- スタートダッシュで限界まで詰める
- この時期に一番人手を使うようにする
- ここで躓くと最後まで尾を引く
中間検査
施工が開始されてある程度経過すると中間検査となります。
中間検査の目的
中間検査では施工計画や仕様通りに進捗しているかどうか?このまま施工を進めて完成検査を受ける前に新たな問題点はないか?といったことを確認します。
現場に施工状況のほかにも品質管理状況として各種自主検査・品質確認記録表・施工写真など、現場運営も滞りなく行われているかも確認します。
受験する側の姿勢としては当然全て取り揃えておかなくてはいけません。しかし現場の事情があって進まない場所、問題点もあるでしょう。
そういった懸念事項も中間検査でありのまま担当者に伝え、問題点を共有してもらうようにしましょう。場合よっては設備の検査官からゼネコンの所長に取り繋いでくれることもあります。
中間検査が終われば竣工までとにかく施工を進めるだけですので、このタイミングで軌道修正をかける機会としてください。
- 実施時期:配管の施工が開始して間もなく
- 目的 :施工計画の進捗・完成検査に向けての問題点の確認・軌道修正
- 確認事項:検討会での検討事項の実施工状況、施工全般
上司として中間検査を実施する場合のポイント
中には上司・指導する先輩として社内の中間検査を実施する立場の方もいらっしゃるかと思います。その方に覚えていただきたいことがあります。
現場に行った際には細かい指摘を挙げて現場確認をするのではなく、その指摘の背景を見るようにしていただきたいと思います。
「帳票類がまとまってないのは人が足りていないからではないか?」
「代理人と番頭の間にミスコミュニケーションが起こっているのではないか?」
中間検査では現場の状況を客観的に把握し、悪くなっている流れを修正して次の対策をアドバイスしてあげるのが検査官の役割の1つです。
受験する側も抱え込まず、自身がパンクする前に問題点を報告しましょう。順調に進んでいても「今後この時期に人が欲しい」と依頼するなど、中間検査は施工体制を見直す絶好の機会になります。ぜひ活用して現場を上手に進めていってください。
- 確認するのは出来栄え以外にも、現場運営の方向性もある
- 指摘そのものではなく、指摘の背景にある原因を探る
- 受注先の担当者・検査官を上手く利用して建築と交渉する
完成検査
中間検査以降はとにかく施工を進め、工事を完成させていきます。工事が完了したならば完成検査となります。
完成検査の目的
冒頭にも記載しましたが、完成検査は法令上定められた検査です。完成検査は「とにかく結果」です。施工時に色々なことがあったかもしれませんが、品質的に間違いないものを引き渡さないといけません。言い訳無用です。
検査では外観検査・機能検査・帳票類などの書類検査などになります。仕様通りの施工ができたか?書類にあっても一切の漏れや不備がないよう確認を怠らないよう注意してください。
- 実施時期:工事完了後20日以内
- 目的 :工事の完成状況
- 確認事項:外観・機能・各種帳票類
議事録を作成しておく
とはいえ現場は様々な変更があるのが当たり前です。しかしその施工がきちんと手順を踏んで行われたものなのか?その証拠がないと「仕様通り」とならずに指摘・是正となってしまいます。
設備の大きい指摘というものは完成検査時に仕上がってからのやり直しとなった場合、自社以外にも多大な被害が及ぶ事が多くなります。
こうなると最後の最後で支払いが増えてしまった、予算がなくなり協力会社に追加で支払うことが厳しくなってしまった、など施工以外のトラブルにも発展してしまいます。
完成検査を受ける前に、その施工を行う前に必ず変更した項目についての議事録を作成して承諾を必ずとりましょう。
- 言い訳無用、とにかく完成した結果が求められる
- 変更項目や不安な事項は議事録を必ずとっておく
最後に
正直どんな経過が酷くても、完成検査で完璧ならむしろ評価は高いです。どんなに経過が良くても完成検査が指摘だらけだと印象は最悪に。
最初に躓いたとして挽回するのは相当大変ですが・・・。
ゼネコンとサブコンには元請ー下請という関係が付きまといます。工事を進める上で利害が一致しない場合もありますが、あくまで協力してよい品質の設備を納める。目的は同じです。関係各者を上手に巻き込んで品質のよい設備を完成させましょう。