【ゼネコンとサブコンの違い】建築設備の施工管理はどんな仕事?
「建築」と「設備」は同じ建物を造っていく関係でもその工事内容も働き方も大きく異なります。ここでは
- そもそも建築設備って何?
- 設備工事の施工管理ってどんな仕事?
- ゼネコンの施工管理と何が違うの?
といった基本的な部分について紹介していきます。
- 建築設備という言葉を初めて聞いた
- 建築設備の施工管理という仕事に興味がある
- これから設備業界に入ろうと検討している
- 設備業界に入ってまだ数年程度
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建築設備とは?
建築物というのは大きく分けて「意匠」「構造」「設備」の3つに分類されています。これらはどれも建物にとって重要な要素で、よく人間の部位に例えて表現されます。
人でいうと外見、建物でいうとデザインといったものはやはり一番注目される要素かもしれません。しかし骨や筋肉、体の内側だって人間にとって欠かせない要素です。
建築設備は人間でいう所の血管/神経などによく例えられます。目立ちはしませんが建築物にとって重要な要素の1つなのです。
建築設備はさらに「機械設備」と「電気設備」に分かれます。
建物に空気・水などを供給し、それらを最適な環境となるように制御する
これが機械設備の役割です。
なお建設業界では主に設備=機械設備、電気=電気設備として取り扱われる事が多く、機械設備は現場の規模や用途によっては空調設備と給排水衛生設備に分類される事があります。
「設備屋さん」といえば機械設備、「電気屋さん」といれば電気設備業者と覚えておきましょう。
施工管理の仕事とは?
建築物は以下の流れで造られていきます。
そして施工管理とはこの施工の部分で安全・品質・工程管理を主な業務としています。
その他にも行政・近隣対応など細かい仕事は山ほどありますが、ここではこの程度としておきます。
建物を造っていく中で「現地で」「現物を」「現実に」関わっていく職業なのです。
ものづくりの仕事において、現場を知らないと本当にいいものはつくれない。
建築に関わる職業の中で一番基本になる職業だと私は思っています。
建築設備の施工管理の仕事とは?
建築設備とは? で述べたように建築は大きく3つに分類されます。意匠・構造はゼネコンが主体となり、設備は専門会社が主体となって工事を進めていきます。
こういった専門会社のことをサブコン(Sub Contractor)といいます。業界では一般的に機械設備や電気設備会社のことを指して使われますが、実は鉄筋・大工などもサブコンにあたります。
専門工事会社には様々な業種があり「施工管理」を行うことは共通ですが、機械設備で管理する主な職種は以下の通りです。
職種 | 主な取り扱い |
---|---|
空調配管工 | 冷水・温水配管の施工。溶接配管を主に扱う。 |
衛生配管工 | 給排水通気配管の施工。ネジ、樹脂管類を主に扱う。 |
冷媒配管工 | 冷媒配管の施工。パッケージエアコンの銅管を主に扱う。 |
消火配管工 | 消火配管の施工。スプリンクラー、泡消火などの消火専門配管を扱う。 |
ガス配管工 | ガス配管の施工 (ここだけ建設業法ではなくガス事業法の運用。) |
ダクト工 | ダクトの施工。 |
保温工 | 配管、機器、器具の保温・板金の施工。 |
塗装工 | 管、機器、器具の塗装の施工。 |
計装工 | 自動制御設備の配管、配線の施工。機器の設置。 |
重量鳶 | 重量機器の設置。 |
まれに改修工事などでは、設備が元請となって下請負として建築会社や電気会社が入ってきますが、新築工事ではこんなところでしょうか。
どんな人が向いている?
建築現場の仕事で大事な能力というと一番よく聞かれる言葉は
「コミュニケーション能力」
と言われてます。でもこれってどんな職業でも同じこと言われませんか?こう言われてほとんどの人が想像するのって「コミュニケーションお化け」なんだと思います。そんな人はこの仕事に限らずどんな仕事でも成功するでしょう。
なので私は人として最低限のマナーさえしっかりできればよいと思っています。
- 「ありがとう」が言える
- 「ごめんなさい」が言える
- 分からないことを素直に聞ける
- 頼まれていた仕事が間に合わないなら早めに言う
これで十分です。秀でたコミュニケーション能力までなくても問題ありません。その上で建物が出来ていく過程が好きとか、オフィスで働く事が堅苦しくて嫌だ、等の人も建築現場には相性がいいと思います。
- 地図に残る仕事がしたい
- 建物が出来ていく過程を見ることが好きだ
- オフィスでピシッと働くのが苦手
しかしここまでだとゼネコンと変わらないので建築設備に焦点を絞ります。建築設備は人間の体でいうところの、血管・神経を司る部分です。外からは見えませんがとても重要な役割をしています。なので例え目立たなくても縁の下の力持ちのような立場で働きたい、という方には向いていると思います。
- 建築物に納める大きい機械が好き
- 見えない部分を造っている所が縁の下の力持ち的でかっこいいと思える人
そして建築の施工管理と設備の施工管理で一番大きく異なる点は
早いうちから大きなプロジェクトを任されることが出来る
という点です。チャンスがあれば20代でも何億円ものプロジェクトの責任者(=現場代理人)となることが出来ます。
女性の設備施工管理について
よく施工管理と言うと「残業が多い」とか「パワハラ気質な上司」とか「理不尽な慣習」そういった言葉を聞きます。そんな過酷な状況で女性が働くなんて…と思われる方もいらっしゃるのですが、そんなことは女性に限って大変なわけではありません。
最近ではパワーハラスメントなどの教育、2024年からの残業時間規制対策、DXの浸透などにより確実に働きやすい環境になってきています。
体力が必要なのは男性・女性関わらず同じですが、施工管理が実際に作業をするわけでもないので力もそこまで必須ではありませんので女性に限らず活躍が望める職種だといえるでしょう。
設備の施工管理に限った話をすると、建築の施工管理と比較してその人数は少ない印象があります。 作業所内の人数が少ないため 仕事のフォローないし交代での休暇というのも取りづらく敬遠されているのではと推察しています。 私が新人だった2000年代中盤は女性の設備施工管理は会社の中でも1人でした。(現在退職済み)
しかし働く環境は確実に変わってきているとも実感しています。大手の空調・衛生設備の各社HPを見てみると女性の活躍を謳い、環境を整え、施工管理としての求人も積極的に行うようになったことが分かります。実際に施工管理として働く女性もよく見かけるようになりました。
施工管理は他業種に比べ平均年収も良い上に、様々なキャリアも望める職種でもあります。建物が好きで、動いている現場で働きたいという方は是非選択肢に入れてみてください。
- 建築、電気に比べて人数は少ない
- 力仕事をするわけではなく、性別は関係ない
- 労働環境は確実に良くなってきており、活躍する女性も増えてきている
建築設備の施工管理で身につくスキル
施工管理として経験を積んでいくとその業務の特性上様々なスキルが身につきます。決して最初からこういったものが備わっているわけではありません。取り組んでいくうちに段々と身についていきます。
- 先を読んで物事を手際よく進める段取り力
- 人に気持ちよく動いてもらうためのコミュニケーション力
- 急な調整事項やトラブルなどに対する対応力
- 基本的なエクセル等の事務能力
- 様々な業務を同時進行するマルチタスク能力
ここまでは建築の施工管理であろうと設備の施工管理であろうと変わりはありません。変わっていくのはこの先になります。
先ほども述べましたが設備の施工管理では早ければ20代でも現場代理人を任されることになります。そうすると作業所全体のマネジメントを行うことになりますが、この現場代理人業務に携わることが社会人として大きなステップアップに繋がります。
その中でも「予算管理」は他の職業含めて若いうちではあまり経験させてもらえない業務です。
お金を扱うが故に責任も重大ですが、様々な企業が絡んで進める建設プロジェクトです。お金の正しいやり取りが無ければ上手く進行しません。
自分の裁量で人・もの・金を動かせる
ということは社会人として大きな経験です。ゼネコンで大きなプロジェクトの責任者というとせめて40代にならないと経験出来ないでしょうが設備では早くから経験することができます。(額は全然違いますが)
若いうちにこういった経験をすることで、建築工事全般の知識以外にも生かせる様々なスキルが手に入ることでしょう。
- 裁量が多く、自由な働き方ができる
- 億単位の莫大な金額を動かせる
- 人に対するマネジメント能力が身につく
- 代表者としての交渉力が身につく
最後に
いかがでしたか?ざっと建築設備の施工管理についてまとめてみました。
私はこの仕事を始めてから10数年になりますがやっていて良かったと思います。辛い時期もありましたが、今はこうしてブログ運営をできるくらい安定した生活を送っています。
施工管理自体は様々能力が求められるものの最初からできる必要もありませんし、段々と身についていきます。設備の施工管理に関して言えば若くから現場代理人業務をこなし、スキルが早い段階で身に付くことで将来様々な選択が出来るようになります。
大変な仕事というのは確かですが、やりがいのある仕事です。建築設備業界に興味のある方、是非選択肢の一つとして施工管理もご検討いただけると嬉しく思います。