【現場代理人の労務管理①】個人間コミュニケーション

施工管理業務働き方,施工管理

設備の現場代理人は現場事務所においては一定の労務管理を担います。
現場竣工に向けて予算・工期とにらめっこしながらメンバーの役割分担を行ったり、人員の調整を行ったり。

ですが現場の途中で出勤できなくなってしまったり、現場が終わるたびに誰かが退職願をだしたり・・・
そんな光景も現場に携わっているとよくあることだと思います。

あいつは根性がない・・・

最近の若手は厳しい環境に置くとすぐにやめてしまう・・・

俺の若い頃はもっとモーレツに、がむしゃらに働いていた・・・

そういうことを言う上司をみてきましたよね?
もしくは設備の現場代理人でそういった目線で悩んでいる方もいらっしゃるかと思います。

ここでは複数人で現場を回す際に現場員のモチベーションを管理しつつ、現場を回していく方法について述べていきたいと思います。(前半後半で2回)

人それぞれのやり方はあるかと思いますが参考になれば幸いです。

こんな人におすすめ
  • 設備の現場代理人に着任して歴の浅い人
  • 複数のメンバーを抱えて代理人をしている人
  • 腫れ物を扱うかのように若手の指導方法や教育方法に悩んでいる人
  • 現場は休めないものだと思い込んでいる人

いつまでも自分目線でいけない

現場は代理人がいかに有能であろうと、一人でプロジェクトを成功させることは大変困難なことで、実際には他の現場職員と力を合わせて様々な課題に取り組んでいく必要があります。

そのためには現場代理人はいち担当者時代とは異なり、自分中心だった目線を全体にむけて業務に取り組み、全体最適を心がけて、現場職員に対して指示・指導をしていくことが求められます。

現場代理人の意見は生存者バイアス?

様々な指示・指導を行っていく中で、まず前提として現場代理人になった方に認識してほしいことがあります。

それは仕事が認められて現場を任されるようになり、一定の裁量の上で仕事を行うことができるようになった現場代理人の意見は生存者バイアスが入っているかもしれないということ。

現場代理人はあくまで現場での肩書であって所属する会社で必ずしも偉いというわけではありませんが、会社からは一定の信用は得ているはずなので、多くの人は順調に出世しているかと思います。

自分自身が成果を出して出世する、という意味ではこれまでの思考や行動は当然本人にとっては正しかったのだと思います。

しかし、現場代理人になれずに燻っている人や現場の空気が合わずモチベーションが上がらない人、離職してしまった人の思考は間違っているかというとそうではありません。

彼・彼女らなりに様々な事情があって現状がそうなってしまっている可能性は簡単に切り捨てるべきではないと思うのです。

自分自身の正解=他者の正解ではない

今まで仕事をする中で「こうやるべき」「この方がいい」という考えも生まれてきたと思いましたし、「これが自分は嫌だったから、部下ができた際にはやらないようにしよう」ということもあったと思います。

ですが、もしかしたら他のメンバーはそうでないかもしません。
例えばですがこんなことも・・・

自分は土曜日に休めないのが嫌だったから、必ず自分の現場では他のメンバーについては完全週休2日を実現できるようにしよう!

できるだけ土曜日も積極的に仕事して、早く成長してのし上がるんだ!
って思ってたのにやる気が削がれるなあ・・・

同じプロジェクトに携わり、同じ仕事をしている関係でも仕事との向き合い方はひとそれぞれ。
さらには環境だって違うこともあるのです。

働く上での背景は人それぞれ
  • 現場代理人を目指してまさにがむしゃらになって仕事に取り組んでいる人
  • 心労が溜まり、ペースを落として仕事をしたい人
  • 仕事は割り切って自分の時間を大切にしたい人
  • 子供が生まれ、家庭に寄り添いたい時期の人
  • 交際している人がいて、デートを優先したい人や近々結婚を考えている人

そういった方々皆で足を揃えてゴールするというのは至難の業です。

ひと昔前であればトップダウンの現場代理人の下、ついてこれない人は脱落。次の人間が代わりに入ってきて残った人が出世していくという時代でした。
ですが今は心を傷つけてでもメンバーを叩き上げるといった接し方は今の時代にはそぐいませんし、加えて少子化+建設業で働く人材が入ってこないということもあり、代わりの人間に来てもらうことは困難になっています。

そのため現代の現場代理人はこういった人たちの背景に配慮をしながら、今いる人材でいかにパフォーマンスを高める現場運営をしていくか?を考える必要があるのです。

まずは個人間のコミュニケーションから

人の数だけある背景をくみ取るのはコミュニケーションの回数を重ねるしかありません。
色んな場面が考えられますが、積極的に活用していきましょう。

注意したいのはプライベートな事情が入ることもあるので1対1で話あうことです。
もちろん異性と話を交える場合には食事に誘って話すのは不適切というのは当然です。

活用したいコミュニケーションを取る場面
  • 一服でたばこや飲み物をとっている時間
  • 一緒に食事をとる時間(同性に限る)
  • みんな現場に出払って事務所で二人きりになる時間。

定期的に日時を決めてもよい

人によっては合う合わないだったり、会話があまり嚙み合わない人もいて自然な流れでコミュニケーションを取りづらい人もいます。

そういった場合は月に1回とか、日時を指定しても結構です。お茶菓子でも食べながら、リラックスした雰囲気で話し合いの場を作って徐々に話しやすい環境を作っていきましょう。

1対1で話し合う内容

そのように1対1の話し合いの場を設けたら主に次のようなことを確認します。

1対1で話し合う内容
  • 自己紹介(社歴やこれまで取り組んできたこと)
  • 仕事上で得意なジャンル(計算が得意・口先が得意)
  • 今の現場をこなしていく上で仕事の向き合い方
  • 話せる範囲で家庭の事情(子供が小さい、大事な時期等)
  • 持病の有無等
  • 休暇について(デートの日は絶対休む!、趣味のイベントの予定がある等)

気を付けたいのは、一つ一つ確認するように聞くのはいきなりでは敷居が高いです。特に異性に対して恋人はいるだ言った日にはセクハラで退場処分もありえますから・・・。

例えばたばこを吸いながらの軽い会話の中だけで一旦納め、定期的な場を設けた際に改めて確認をする、という形でもよいでしょう。

全ての事情は把握できなくても

  • どの程度仕事に前向きになっているか?
  • どの分野が得意で能力を発揮できそうか?
  • 現在課題としていることは何か?
  • どのような言い回しをしたら気分が乗りそうか?
  • どうしても休みが必要な状況
  • どうしても残業ができない日

この程度は回数を重ねていけば把握できるかと思います。
大事なのは個人のプライベートの把握ではなく、どのような働き方をしてもらえれば個人がパフォーマンスを発揮しやすいか?ということを把握することですから。

なお若い現場代理人で現場以外のことでそこまでは手が回らない場合もあるでしょう。
そういったときはその上司である課長あたりが把握しておくべきことでもあるので、連携を取ってメンバーのパーソナリティの理解に努めるとよいかと思います。

極力お酒が入る場面では込み入った話はしない

ちょっと待って、コミュニケーシといえば飲み会を忘れていませんか?飲みにケーションです!

と、お酒を伴う場面はコミュニケーション機会として有効利用したいと思う方は大勢いるかと思いますが注意が必要です。

1対1ならまだしも、他の同僚がいる場面では聞かれたくない話もあるでしょうし、その中でうっかり話をしてしまうこともあるかもしれません。冗談のつもりでいう事もあるかもしれません。

受け取る側も気が大きくなって、出来もしない約束をしてしまうこともあります。

愚痴の言い合いとか、趣味の話なんかは結構ですが、何よりお互い判断能力が低下している状態で大事な話はしない方が賢明です。

もし飲みの場で大事な話をするようであればアルコールは控えめな量としたり、翌日など日が浅いうちに真意を再確認するとよいでしょう。

個人間コミュニケーシのまとめ
  • 1対1でなるべくリラックスした環境で話し合う。(異性の時は注意)
  • 自然に機会が作れない場合は定期的に面談をスケジュールに組み込む
  • お酒を伴う環境で込み入った話はしない

自分との能力や置かれた環境の違いを認める

冒頭でも書きましたが、順調に出世して現場代理人となった人が勘違いしやすいのは

「自分はここまで出来たから、他もメンバーにも同程度のことはやってもらわないと困る」

と考えがちなことです。

これまで書いてきたように人それぞれ得意不得意があり、また置かれた環境しだいでは時間が許されない場合だってあります。

自分の手足となって動いてくれるメンバーだけれども、自分とは違う人間で必ずしも自分と同じようには仕事は進められない。
そのことを理解して前提条件とすることだけで、現場運営方法は全く異なる方向へ変わってきます。

現場代理人の発言の重さを自覚する

なぜそこまで個人間コミュニケーションの話をするか?

現場で最も大事な要素である「人」そして一番身近な現場所員たちと(一定の)理解を得る事で現場運営の基礎ができあがるのです。ここがスタートラインなのです。

現場代理人はその現場のトップです。指揮者であり責任者です。
決定力があるその発言は自分が思う以上にほかのメンバーを縛ります。

配慮のない言葉一つで信頼関係は一気に崩れることだってあります。
その発言一つ一つが各メンバー一人ひとりにどういった受け止め方をされるか?コミュニケーションを深めながら探っていかなくてはいけません。

時々刻々と変化する現場において、各メンバーは混乱して本来のパフォーマンスを発揮してもらうためにもトップである現場代理人は、責任を持った発言を心がけ、一貫性を持った指示・指導をしていくことを心がけまししょう。

ここまでのまとめ

いかがでしたでしょうか?

現場を成功させるためには代理人は個人目線から全体最適へ目線を向け、そのためには現場職員らメンバーとのコミュニケーションが重要ということ、その取り方について書かせてもらいました。

ここまで聞いていると、皆の話を聞くだけの都合のいい人に思われがちですが、続きは次の回で述べていきます。気長にお待ちください。