【建設BIM/DX】施工管理ツールの進化と今後②
その①では建設業、特に施工管理にまつわるデジタルツールについて、振り返りをしました。
今回は2020年時点のものですが「Revit MEPによる設備設計 ~始めて取り組む方に~」というAutoCADが公開している動画を紹介しながら自分が感じたことを中心に、今後の施工管理のあり方についてまとめていきたいと思います。
今後、人手不足・技能伝承問題、BIMの発展に合わせて「施工管理業務そのものも変わっていく」と認識のもと解説をしていきます。
- 既存の施工管理業務に慣れてきて何となく業務している人
- 建設DX・BIMなどのデジタルを用いた業務に興味のある人
- デジタルツールに対応できない高齢社員にもやもやしている人
▼参考記事
目次
Revit MEPとは
BIMソフトは様々ありますが、Revitは意匠・構造・設備が統合されているもので、建設プロジェクトの企画段階から引き渡しまで一貫して使用できるソフトとなっています。(Autodesk社によるとこれは今のところRevitにしかない強み。)
その中でもRevit MEPとはAutodesk社が提供するBIMソフト「Revit」のうち、設備設計用として提供されているものとなります。
▼Autodeskホームページ
https://www.autodesk.co.jp/products/revit/mep
優れた拡張性
さらにRevitのには様々なアドオンでの拡張機能があり、作図以外の計算・シミュレーション等を合わせて実行することが可能です。
ここでは2つほど紹介します。
Dynamo
1つ目はDynamoという視覚プログラミングツールです。
機能を拡張するにはPythonというプログラミング言語が必要ですが、このDynamoを使用することでワークフローの設計やタスクの自動化を行うことを目標としています。
▼Dynamo概要
https://bim-design.com/product/dynamo/
例えばこちらの動画「Revit MEPによる設備設計 ~始めて取り組む方に~」で紹介されている「EPSの自動納まり検討」もDynamoを利用して最適なEPSサイズ(内部の配管・配線含め)を機械学習にて算出しています。
(38分10秒~)
計算書類の帳票出力等、別フローで設計者が行っていた業務を作図と同時並行的に行うために利用されることになります。
Panasonic LightningFlow
これも上記動画内で紹介されているPanasonicのリアルタイム照度設計システム「LightningFlow」というアドオンになります。
(35分15秒)
通常は別のソフトに建築モデルを一から入力していかないとなりませんが、こちらはアドオンなのでRevit上での操作が可能です。
読み取った建築モデルに照明ファミリを載せるだけで自動的に照明イメージや照度表示が行えます。
このように今まではメーカーに依頼して作成していたものも拡張機能としてRevitに組み込むことによって、設計者が簡単に作業できるようになります。
情報を一元化することで同時並行的な作業をしたり他のフローを省略できるようになるというのがBIMの利点であり、Revit上で意匠・構造・設備をシームレスに検討できるというのが最大の強みというわけです。
キーワードは「標準化」
様々な便利機能があり、業務の省力化が図れるBIMはなんて素晴らしいんだ!
と、ここまでの説明を聞いて感じてくれる方もいるとは思いますが現実はそうではありません。
今までのCADでは平面上で線を引くだけで入力は済んでいましたが、BIMでは様々なパラメーターを入力しなければいけません。
多くの建築物はある程度は標準化されている部品を使うものの、ほとんどはオーダーメイドになります。
毎回新しい部品を3D形状含めて作成して登録するにも大変な手間と時間がかかりますし、追加で欲しいパラメーターが出てきても簡単には反映できません。
情報が不足することで、せっかくBIMを利用してもアウトプットの完成度が8割のものしかできなかったら意味が無くなってしまうのです。結局別フローで作業することになりますから・・・。
BIMで何をしたいか?を最初にしっかり確認し、プロジェクトメンバーで実施方法を共有してから走り出さないと従来業務の削減は望めません。そして情報の入力頻度を下げて業務負荷を軽減するためには、すでに登録されている情報を活用することが重要になります。
それには各プロジェクトにおいて決まった部材を使ったり、同じ業務フローで回せるようにすること、つまり「標準化」ということがキーワードになってくると私は考えます。
予想:建設業は2分化していく?
とはいえ基本的にはオーダーメイドとなる建築物です。標準化も限度はあります。
そうすると今後建築物は「標準化しやすい建物」と「そうでないもの」の2分化されるのだろうと予測します。
- シリーズものの、マンションやオフィスビル
- 比較的素直な形状の建築物
極力同じ部材・工法でユニット化したもので造っていく。
イメージしやすく言うと「ハウスメーカー的なゼネコン」と「今まで通りのゼネコン」の2種類になるのではと私は考えます。
もちろんスーパーゼネコンなどはBIMを使いこなしつつプロジェクト毎の特性に合わせた建築物を造っていけるでしょうが、そこまで馬力がある会社はしばらくは少数であろうかと思います。
施工管理も上流のフローへ
Revit MEP等のツールを使いながらBIMが普及してくるとします。そうするとどんなことが起こるでしょうか?
せっかく苦労して設計段階でまとめあげたBIMです。施工段階で変更を重ねながら同じことをしているのでは全く意味がありません。むしろ業務負荷が増えることになります。
なので施工初期段階で変更検討するものをある程度設計段階で見込んでおく必要があります。これは今の業界の設計者だけでは到底不可能な話です。(能力でなはく業界としての業務のやり方的に。)
それではどうすればいいか?というと施工側も積極的に設計BIMに関わっていくことが重要になってきます。
施工者は着任初期段階で設計図を精査し、実情に則した提案をもって設計図から変更をかけていきますが、これを前倒します。
BIMは元請けであるゼネコン主体で進んでいくものの、サブコンも現実的に設計段階から絡んでいく必要があるのです。
サブコンの施工管理が要らなくなる!?
設計時点での現実味が増え、BIMの中心的な役割を果たすゼネコンに情報が集約されるとどうでしょう?
私は
簡単な現場であれば設備業者の管理もゼネコンがやってしまえるのではないか?
そう思います。
そもそも(設備以外においても)施工管理に求めらる労働価値は
「現場に合わせて臨機応変に納まりを調整し、関係各所と協議しながら工期内に工事を完了しつつ利益をだす。」
というのが持論で、それを達成する上で高度なスキルが求められるからこそ相応の報酬が得られると考えています。
この部分が設計BIM段階においてある程度解消されてしまう(そもそもそうしないとBIMの意味がない)ことで施工管理自体に求められるスキルが低くてもよくなるとどうでしょう?
ある程度誰でもできる仕事になれば労働価値は下がりますし、そもそも高いお金を払ってサブコンに仕事を出さなくてもよくなると思いませんか?
管理する項目が極限まで少なくなれば、程度によっては建築の担当者が直接設備の職人さんを管理してもよくなるかと思います。
行き着く先を考えると施工管理にとってRevit MEPは設備設計BIMとして優れた性能を持つがゆえに、仕事を奪われる相反するものとも言える、そう思えてはこないでしょうか?
まとめ
いかがでしたでしょうか?
BIMツールの有用性とその副作用といった内容でRevit MEPを紹介させていただきました。
「こんなこと妄想だよ、現場はそんな簡単にいかないよ。」
そんな声が聞こえてきますし、まだまだそんな簡単には都合よく進まないとも理解しているつもりです。
ただ人手不足(特にベテランの熟練者が大量引退すること)や資材価格高騰が止まらないこのご時世、建設業界もBIMを用いたDXを進めていかないと立ちいかなくなるのは明白です。
前回紹介したデジタルツールもおおよそ普及しきるのに10年はかかっているところを見ると、BIMについては統合版Revitの登場から10年後の2026年あたりから「何か最近BIM物件増えてきたな?」と感じてくるでしょう。
国交省では2025年から原則BIM化ですしね。
気づいたら今持っている有用なサブコンの施工管理スキルの価値が下がっていたなんていう事も、リスクとして覚えておかなければなりません。
今バリバリに施工管理第一線で活躍されている方も、時代の流れに沿ったスキル育成・キャリア形成を意識しないといけない転換点にあるのではないか。
BIMの発展を途中経過ながらに見て、そう感じています。