【サブコン各社を徹底調査】大手空調・衛生設備各社の特徴と比較 2021年度版
空調・衛生設備工事を主力事業とする大手、準大手を中心の建築設備会社を紹介する企画。もう3回目になり、2021年度版となります。各社HP情報や有価証券報告書を調査しました。
2021年度はまだまだ新型コロナウィルス感染症の影響もあり業界全体も伸び悩んでいるようです。大手の業績を比較しつつ調査をしてみました。
各企業の特色などはそのままに、昨年度の動向を踏まえながら紹介していきたいと思います。
- 設備業界に興味を持っている人
- 設備業界への就職を考えている学生
- 設備業界に従事しているが他会社の事も気になる人
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目次
高砂熱学工業
高砂熱学工業㈱は一般空調設備や産業空調設備を主力事業とし、建築設備(空調・衛生)業界最大手の企業です。その歴史も深く、2023年には創業100周年を迎えます。日本で最初のヒートポンプ暖房設備を設置したり、国産第1号のターボ冷凍機(高砂荏原ターボ冷凍機)をはじめとして、エアワッシャ、シロッコ型送風機や冷却塔など数多くを開発してきたパイオニアでもあります。
これまで20年近くにわたり建築設備向け水素利用システム開発で培ってきた技術により、グリーン水素製造用水電解装置の市場展開を開始。
北海道石狩市様の厚田地区マイクログリッド事業向けに導入を予定しており、太陽光発電、二次電池、燃料電池、これらを制御するエネルギーマネジメントシステムと融合させた分散型電源系統の構築に取り組んでいます。
将来の月面経済圏でのビジネス展開可能性に着目し、月面での世界初の水電解による水素製造への挑戦に着手するなど、まさに時代の先端に高砂あり。これかも目が離せません。
まもなく100周年を迎えるにあたり、2020年11月に新中期経営計画”iNnovateon2023gobeyond!”を策定しましたが、新型コロナウィルスでの情勢の変化に伴い、現在は取り下げています。
【2021年度完成工事高】連結3027.4億円 単体2206.2億円
【従業員】連結6,018名 単体2,131名(2022年3月現在)
【平均年収】889万円(42。3歳・総合職。2022年3月現在)
【事業所】東京本店、横浜支店、関信越支店、東北支店、札幌支店、大阪支店、名古屋支店、中四国支店、九州支店、ミャンマー支店
【グループ・関連企業】国内7社、海外10社
【社是】人の和と創意で社会に貢献
【キャッチフレーズ】この星の空気をつくる、まもる。
新菱冷熱工業株式会社
新菱冷熱工業㈱は使われている漢字から某旧財閥系をイメージするかもしれませんが、独立系です。ただ三菱重工業㈱が最大の出資元となっており、その繋がりで一般空調以外にもプラントなどを始めとした大規模な産業空調を主力事業とする企業となっています。中でも水族館の他、地域冷暖房で最も実績のある会社となっています。(地域冷暖房とは1つのエネルギープラントからそのエリアの複数の建物へ電気や熱を供給するシステムです。)
2022年3月には規模熱源システム向けのAI制御システムを丸の内熱供給株式会社と共同で開発し、地域冷暖房業界で初めて「冷凍機システムのエネルギー消費量が最小になる最適運転の自動化」に成功しています。
現場の省力化においては施工情報を現場の床面に完全自動で描画するロボット「施工図描画ロボット」が全国複数の建設現場で本格稼働を開始。DXの面でも開発を進めています。
また2022年度においては新卒初任給の引き上げと共に、従業員一人当たり平均で前年度比6%以上の賃上げを実施するということで、人材確保のための採用競争力を強化を計っています。
【2020年度完成工事高】連結2332.9億円 単体1839.5億円
【従業員】連結5,543名 単体2,252名(2021年9月現在)
【平均年収】889万円(43.7歳・総合職。2021年実績)
【事業所】北海道支社、東北支社、丸の内支社、横浜支社、北陸支社、名古屋支社、大阪支社、九州支社、名古屋支社、中国支社、アジア支社
【グループ・関連企業】国内8社、海外10社
【社是】一、正しからざることに与するな 一、あらん限りの誠実を尽くせ 一、学歴年令を問わない 実力ある者が指揮をとれ
【キャッチフレーズ】心地よい場所を、ひとつずつ。
三機工業株式会社
三機工業㈱は旧三井物産㈱機械部を母体とし、1925年に創立した歴史ある企業です。建築設備事業以外にも、産業機械、環境施設事業を主力事業としています。当時は炭鉱が盛んで、日本で最初にベルトコンベヤーを輸入・販売・製造した会社でもあります。
神奈川県大和市にある研究施設「R&Dセンター」では事業者と研究機関、三機工業の各部門が柔軟に連携して開発を推進・加速できるよう、自在に試験環境をつくりこめるフリーエリア、モックアップルーム施設を導入するなど「オープンイノベーション」を展開。現在は次世代燃料電池の評価用向けの環境試験設備の開発を行っています。
2021年度はデンマークで下水処理に用いられる省エネルギー型散気装置、タイでDHS法を用いたエネルギー最小型下水処理ユニットを手掛けるなど、水処理施設の海外市場開拓によるビジネス拡大を施策の1つとして掲げています。
2025年には創業100周年。中期経営計画の2022~2025年度においては「社会のサステナビリティへの貢献「働き方改革の加速」「次世代に向けた投資」の3本柱でビジネスを展開していく模様です。
【2021年度完成工事高】連結1,931.8億円 単体1,735.4億円
【従業員】連結2,607名 単体2,096名(2022年3月現在)
【平均年収】875万円(43.2歳・総合職。2022年3月現在)
【事業所】東京支社(横浜支店、関東支店、千葉支店、茨城支店)、北海道支店、東北支店、北陸支店、中部支社(静岡支店、豊田支店、三河支店)、関西支社(京都支店、神戸支店、四国支店)、中国支店、九州支店、オーストリアオフィス
【グループ・関連企業】国内6社、海外4社
【経営理念】エンジニアリングをつうじて快適環境を創造し広く社会の発展に貢献する
【キャッチフレーズ】カイテキをサステナブルに
ダイダン株式会社
ダイダン㈱は1903年創業と建築設備業界の中では最も歴史のある企業です。工業生産に必要な各種機械、電気器具、鉄材、石炭等の販売を目的とした「菅谷商店」から始まり、(中略)「大阪電気暖房㈱」を経て1987年から「ダイダン㈱」となりました。他の大手企業とは異なり、主力事業は建築設備部門(一般空調・産業空調)のみとなっています。一見「伝統」や「硬派」なイメージがありそうですが、採用ページには「若手にもどんどん仕事を任せる社風」と謳っており、大阪発祥ならではの勢いがありつつ自由な社風である印象を受けます。
九州支社・四国支店・北海道支店に続き、北陸支店が新たにZEB化。ZEBでありながら快適性や街並みへの調和性を兼ね備えた素敵な建物となっています。
「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」35社の1社に選ばれていつというのは前回も記載していますが、2022年2月には更新工事の施工計画にかかる労力を大幅に低減するとともに、円滑な情報共有を促進する施工プロセスの可視化ツール「Construction Visualizer 4D」を開発。国土交通省より「令和2年度 i-Construction大賞 施工・業務部門」優秀賞に選ばれています。
【2021年度完成工事高】連結1,629.2億円 単体1,611.2億円
【従業員】連結1,727名 単体1,578名(2022年3月現在)
【平均年収】937万円(41.9歳・総合職。2022年3月現在)
【事業所】北海道支店、東北支店、新潟支店、東京本社(関東支店)、名古屋支社(豊田支店)、北陸支店、大阪本社(天理支店、神戸支店、京都支店)、中国支店、岡山支店、四国支店、九州支社(熊本支店)、シンガポール支店
【グループ・関連企業】国内9社、海外3社
【社是】真剣努力、思考創造、協力和合、信義礼節、誠実感謝
【キャッチフレーズ】建物の「いのち」をつくる
株式会社大気社
㈱大気社は1913年に「ドイツ製兼材料及び設備の輸入販売並びに諸機材取り付け工事」を主たる目的として創業しました。1952年から塗装プラント事業も手掛け、建築設備事業と並び主力事業となっています。塗装プラント事業を行っているためか、特に目を引くのが海外の関連会社の多さです。企業の長期計画においても「グローバル事業領域の拡大」を明言しており、完成工事高2,092億円のうち海外が1,015億円となっています。
2022年5月には東京理科大学、大成建設株式会社と共同でJAXA宇宙探査イノベーションハブの第7回研究提案募集で採択された「太陽光エネルギーを用いた大気からのCO₂化学吸収法を基盤とする持続型カーボンリサイクル技術の開発」の研究を開始。
コアとなる事業は建築設備に留まらず今後も多彩な方面での活躍がみられるでしょう。
【2021年度完成工事高】連結2,092.6億円 単体1,074.3億円
【従業員】連結5,079名 単体1,555名(2022年3月現在)
【平均年収】1,033万円(42.7歳・総合職。2022年3月現在)
【事業所】札幌支店、東北支店、関東支店、東京支社、横浜支店、中部支店、大阪支社、中国支店、九州支店
【グループ・関連会社】国内5社、海外40社
【社是】顧客第一
【キャッチフレーズ】未来の空気をまもる
新日本空調株式会社
新日本空調㈱は三井物産㈱の斡旋を経て1930年に東洋キヤリア工業㈱として創業しました。世界初の全列車空調、全船空調施工を行うなど歴史のある企業です。当時は空調機器の製造・販売と工事部門がありましたが、1969年に工事部門を分離独立させて今の新日本空調㈱の体制となっています。一般空調・産業空調以外だと原子力事業が特徴的。
技術面では現在は特に微粒子可視化技術に力を入れているようです。コロナ禍で直面した感染症対策への研究を通じ、粒子映像の定量解析技術への基盤強化を計っています。
都心部のオフィスからでも遠隔でドローンを使った天井内既存設備調査や3D計測を行う等、現場業務の効率化を実現していますが、こういった今の時代に適応した取り組みを実施しているところも注目ポイントですね。
他の企業と比較して連結での従業員数が減少傾向にある点がやや気になります。
【2021年度完成工事高】連結1,067.1億円 単体920.4億円
【従業員】連結1,585名 単体1,103名(2022年3月現在)
【平均年収】908万円(44.2歳・総合職。2022年3月現在)
【事業所】北海道支店、東北支店、関東支店、本社(東京)、横浜支店、名古屋支店、大阪支店、中国支店、九州支店
【グループ・関連会社】国内2社、海外3社
【企業理念】「使命」と「価値観」
【キャッチフレーズ】社会と自然の調和を育み、未来に向けた思いを満たす
株式会社朝日工業社
㈱朝日工業社は1925年に大阪で紡績会社の温湿度調整、噴霧給湿、除塵装置等の施工を目的に創業しました。建築設備工事を主力事業としていますが、その技術を生かして半導体やFPD(フラットパネルディスプレイ)製造装置向け精密環境制御機器を主とした環境機器の製造・販売を行っています。
研究開発方面ではカーボンニュートラルに向けたZEBとして潜熱・顕熱分離空間に再生可能エネルギーを活用した技術を開発しています。潜熱処理に採用しているデシカント空調の再生用に太陽熱を利用し、除湿した処理空気の冷却に地中熱を利用しているとのこと。
そのほかにもアグリ分野に対する取り組み、無線センサを用いた比例制御、簡易ダクト工法の開発など様々な取り組みに注力しています。
2022年3月には可視化技術のページを新設しています。肉眼では確認できない微粒子や風の流れを「みえるかラボ」という実験施設でみえる化することで、現象に対する理解を深めることを可能としているそうです。
【2021年度完成工事高】連結688.2億円 単体617.7億円
【従業員】連結987名 単体939名(2022年3月現在)
【平均年収】799万円(44.7歳・総合職。2022年3月現在)
【事業所】東京本社、北海道支店、東北支店、北関東支店、東関東支店、横浜支店、名古屋支店、大阪支社、中国支店、九州支店
【グループ・関連会社】国内2社、海外2社
【企業理念】快適環境・最適空間の創造
【キャッチフレーズ】「心地よい」が当たり前の世界に。
東洋熱工業株式会社
「東熱」でお馴染みの東洋熱工業㈱は1937年に創業。非上場の独立系企業です。ラジオ・テレビスタジオの空調施工を早くから手掛けた経験から1957年に世界最初のエルボ型消音器を開発。その後すべての空調設備の消音装置として採用される事になった他、1964年には他社に先駆けてクリーンルーム技術を研究開発・施工を行うなど空調において確固たる技術を持っています。
熱源システム全体の最適制御を行うE-SCATや冷却水最適制御のパッケージシステムCT-Xなど、空調の省エネルギー技術の開発に注力。クラウドを用いたWEB監視・現場支援などデジタル技術の開発にも力を入れています。
現場作業の効率化についてはBIMとHoloLens2を用いてMRでインサート墨だしを行う技術もなかなかの精度だと評判のようです。
また高所作業車や台車等モノの管理を行い、現場生産性向上を図るmmMs(ムース)というシステムも興味深いですね。
非上場企業ではあるもののチャレンジ精神が旺盛な企業であると個人的には思っています。
完成工事高についてはここ数年で下がっています。大型現場の影響があるのでしょうか。
【2021年度完成工事高】666.8億円
【従業員】812名(2022年3月現在)
【平均年収】915万円(43.6歳・総合職。時期不明)
【事業所】東京本店、札幌支店、東北支店、関東支店、横浜支店、名古屋支店、大阪支店、中国支店、九州支店、ミャンマー、グアム
【グループ・関連会社】国内2社、海外6社
【経営理念】環境に、社会に、文化に、責任ある企業として調和のとれた発展を目指す。
【キャッチフレーズ】技術を、人と地球のために
三建設備工業株式会社
三建設備工業㈱は1946年に創業した、非上場の独立系企業です。いち早くZEBの技術開発に取り組み、つくばみらい技術センターでは、2013年度実績で全館のZEBを達成しています。(ダイダン、新日本空調、新菱冷熱工業と共に空調衛生工学会発行の「ZEB先進事例集」でも紹介されています。)そして2018年には北海道支店を寒冷型のZEBとして建設するなど経営理念である「環境創造企業」として突き進んでいるようです。
2021年6月にプレスリリースされた「(仮称)さいたまSBビル新築工事」が2022年4月に竣工したとのことです。ZEBとしてというのはもちろんのこと建築工事も含めて自社で設計施工。そして女性エンジニアが中心となり設計・施工管理を行うとともに、「働き方改革」のモデル現場として運営とのコンセプトでしたが結果はいかに・・・個人的には何かレポートなどが出てくれると嬉しい。
ZEBの導入もいち早く行っていましたし、省エネには定評があると勝手に思っていますが2021年12月には一般財団法人省エネルギーセンターが主催する『省エネ大賞』(2021年度)を2部門で受賞しました。
【2021年度完成工事高】750.9億円
【従業員】1,299名(2022年3月現在)
【平均年収】835万円(43.8歳・総合職。時期不明)
【事業所】北海道支店、東北支店、東京支店、北関東支店、東関東支店、横浜支店、名古屋支店、大阪支店、中国支店、九州支店、バンコクオフィス、ジャカルタオフィス
【グループ・関連会社】国内6社
【経営理念】環境創造企業
【キャッチフレーズ】いつも、二度とない仕事。
【HP】https://skk.jp/
日比谷総合設備株式会社
日比谷総合設備㈱は1966年に創業。その名の通り、東京都内の大規模現場で多くの実績を持っています。データセンタ関連の技術開発、分散した各設備を統合管理(システムインテグレーション)、ZEB化関連技術の開発に注力しているようです。
2021年7月に「BIM推進室」を設置。DXを推進してくと共に技術開発面ではスマート関連技・データセンター関連技術の開発に注力しています。
2020年度実施したリニューアルZEBの拡大にも注力していくとのことで、ここが他のサブコンとの差別化が図れるといったところでしょうか?
昨年度・今年度で完成工事高が伸び、平均年収も上向いてきています。このまま勢いよく成長できるか楽しみです。
【2021年度完成工事高】連結754.9億円 単体670.9億円
【従業員】連結983名、単体808名(2022年3月現在)
【平均年収】870万円(45.0歳・全従業員。2022年3月現在)
【事業所】東京本店、北海道支店、東北支店、横浜支店、東海支店、北陸支店、関西支店、中国支店、四国支店、九州支店、沖縄支店
【グループ・関連会社】国内2社
【経営理念】HIBIYA Vision(詳しくはHP参照)
【キャッチフレーズ】光・水・空気と情報で建物に命を吹き込む
斎久工業株式会社
斎久工業といえば衛生、衛生といえば斎久工業というイメージを持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?斎久工業㈱は、給排水衛生設備分野の第一人者として1923年に創業、まもなく創業100周年を迎えます。名前の由来は創業者の齋藤久孝より。名だたる超高層ビルを始め東京スカイツリーの衛生設備工事も手掛けており確かな技術を持っています。
最近HPがリニューアルされました。若干古かったのですごくすっきりした感じですね。
2021年現在、日本で一番熱いと言われているであろう大規模再開発「虎ノ門・麻布台地区第一種再開発事業(虎ノ門・麻布台プロジェクト)」の施工も行っているのですが、なんと4つある街区のうち3つの街区にて施工を行っています。スカイツリーに続き、新たな日本のランドマークにその名を刻む日も近いことでしょう。
大型現場を多く受注しているためか完成工事高が大きく落ち込んでしまいました。来年度は回復してくれると良いですが・・・。
また非上場なので開示情報が限定的。今までは就職四季報に平均年収が記載されていましたが、今年度は非回答とのこと。
【2021年度完成工事高】432.9億円
【従業員】498名(2022年3月現在)
【平均年収】非回答(42.5歳・全従業員。参考:2020年度実績737万円)
【事業所】札幌支店、東北支店、東京支社、東関東支店、横浜支店、名古屋支店、関西支社、岡山支店、広島支店、九州支店
【グループ・関連会社】情報なし
【経営理念】快適で安全な生活を支える高品質な設備およびサービスを提供する。
【キャッチフレーズ】時代を導き、建物の未来を変えていく。