【互換・ダメ・絶対】電動工具のバッテリーは純正品で!
何かと便利なバッテリー式の電動工具。マキタ・パナソニック・ボッシュ・日立・・・あなたは何派でしょうか?どれも種類が豊富な上、意外とそこそこのお値段で買えますね。しかし工具や使用頻度を増やすほどバッテリーが必要になってきます。ですが結構なお値段。
アマゾンや楽天などのインターネットモールを覗くと互換性を謳い、手ごろな価格で販売している非純正バッテリーを目にします。しかし最近これらによる発火事故が増えています。
独立行政法人製品評価技術基盤機構(通称nite)ではこれらの事故防止啓発資料を公開しています。ここではこの資料と電気用品安全法を基に、互換性を謳う非純正バッテリーのリスクについて紹介していきます。
- 現場に従事している全ての方
- 施工会社の安全担当者
- DIYを趣味にされている方
- バッテリー式掃除機を使用しているご家庭
目次
nite プレスリリース
2020年1月、独立行政法人製品評価技術基盤機構(以下nite)より「急増!非純正リチウムイオンバッテリーの事故~実態を知り、事故を防ぎましょう~」というタイトルでプレスリリースが発表されました。
2018 年度から 2019 年度にかけて充電式の電気掃除機や電動工具の事故が急増しており、その一因として事業者の指定する純正バッテリーではなく非純正バッテリーを使用していることが挙げられています。
非純正バッテリーだけを抽出すると以下の通り。
充電式電動工具も2018~2019年度で大幅に増えていますが、充電式電気掃除機が特出しています。これはダイソンの掃除機用としてインターネットモールで販売されていた互換性を謳う商品を使用したために起こった火災で頻発したものです。ダイソン社の発表によると調査を行った結果、なんと全ての事故において、火災の原因が純正品ではないバッテリーパックであったことが確認されています。
今後もこの傾向は増加すると見られており、いかに非純正バッテリーを使用することがリスクが高いかということが分かるかと思います。
充電中の事故が8割
niteが行った調査によると特に充電中の事故が全体の8割以上を占めています。期間別に見ると初回充電時や数回の使用など非純正バッテリーの購入後 1 年未満での事故が多く発生しています。

これを見ると互換性を謳っているものの、そもそも粗悪品が多く流通していることがいることが分かります。インターネット経由での購入が実に9割以上を占めているという調査結果もあり、粗悪品でもインターネットなら簡単に流通してしまうという問題もあります。
事故発生のメカニズム
事故発生のメカニズムは下記のとおりで、いずれもバッテリーの発煙・破裂・発火に至っています。
原因 | メカニズム | 発生事象 | 危害 |
---|---|---|---|
セルの不具合 | セルの不具合により 内部ショートが起き、異常発熱 | バッテリーの発煙 ・破裂・発火 | 火災 |
充放電時の 制御装置が不十分 | 放電を繰り返すうちに セル間アンバランスが起き、 過充電で異常発熱 | バッテリーの発煙 ・破裂・発火 | 火災 |
製品との互換性に問題 | 充電器との組合せ不良による 過充電で異常発熱 | バッテリーの発煙 ・破裂・発火 | 火災 |
そもそもバッテリーと製品本体(工具・充電器)は双方の制御機能で安全に動作するようになっています。非純正バッテリーの中には品質の悪いセルが使用されているケースも見られ、制御機能が正常に働かず事故に至るおそれがあると注意喚起をしています。

非純正バッテリーが安い理由
互換性を謳う非純正バッテリーを購入してしまう1番の理由は値段の安さからというのは容易に想像がつくと思います。
ではなぜ安く製造できるのか?海外では人件費が安いから・・・というのはもう昔の話です。現在は純正品でも海外で製作しているものは多くあります。
では何で削減しているのか、一言でいえば「やることをやっていない」からです。
事故が発生しないように検証を重ねる、事故が起きたら真摯に対応する、環境に配慮した生産体制とする等、メーカーとして当たり前の姿勢というものが抜け落ちています。
電気用品安全法(PSEマーク)
電気用品安全法というものがあります。電気用品による危険及び障害の発生の防止を目的とする法律で、約450品目の電気用品を対象としています。これらの製造、販売等を規制するとともに、電気用品の安全性の確保につき民間事業者の自主的な活動を促進する枠組みとなっています。
当然国内メーカーもこれに準拠して製造・販売を行っています。

粗悪な電気用品による危険及び障害の発生を防止する、という観点ですから、輸入品についても対象とされています。
PSEマークの表示義務
モバイルバッテリーの事故の増加を受けて電気用品の範囲等の解釈についての一部改正があり、2019年2月1日以降、製造、輸入又は販売の事業を行う者は、PSEマーク表示の無いモバイルバッテリーを販売することはできない事となっています。(一定以上の容量のもの。経過措置含む)
リチウムイオン蓄電池が機器に装着された状態で輸入・販売される場合は、当該機器の輸入・販売として取り扱う。ただし、ポータブルリチウムイオン蓄電池(いわゆるモバイルバッテリー)等の主として電子機器類の外付け電源として用いられるものは、充電装置や昇圧装置等とともに同一筐体に組み込まれていても機器ではなくリチウムイオン蓄電池と解釈し、対象として取り扱う。なお、ここで、「装着」とは、エンドユーザーが利用できる最終的な製品(機器)にリチウムイオン蓄電池を取り付けた状態を指す。
これによってインターネットモールで販売される互換バッテリーにもPSEマークが表示されているものが並んでいます。PSEマークが無いものは論外です。
PSEマークの無いものは買わない・・・だが
しかし一つ盲点なのはモバイルバッテリーは「特定電気用品以外の電気用品」です。実はこれらは届出にあたって自主的な検査でよく、第三者機関での確認の必要もありません。
つまり、偽装も可能です。そのためPSEマークだけでは確実に問題ない製品であるかの判断をすることはできないのです。(特に海外メーカー)
電気用品安全法の規制対象製はPSEマークと共に製造事業者や輸入事業者名などの表示があります。しかしインターネットで購入したバッテリーの事故発生後に事業者に問い合わせようとしても連絡先が不明であったり、海外の連絡先しか表示されていなかったりするケースもあるようです。こういった問い合わせ先が明確であることも重要になります。
niteの報告書ではPSEマークも本当に届出がされているものなのか?経済産業省への確認を推奨しています。 事業者の連絡先が確かなことを一つの基準としましょう。
- 国内で販売されているバッテリにはPSEマークの表示が義務化されている
- PSEマークは自主検査とされている
- マークがあっても問い合わせが明確であることが重要
誰が責任をとるか?
充電式電動工具の大手老舗メーカーである㈱マキタでは非純正バッテリーについて次のような警鐘を行っています。

充電式の電気掃除機を手掛けるダイソン社はこちら

当然どこのメーカーについても非純正バッテリーに起因して発生する事故については何も責任を負いません。
では互換バッテリーメーカーが責任をとってくれるでしょうか?先ほどはPSEマークと確かな問い合わせ先の確認が重要と述べました。確認がとれればある程度の信頼はあるでしょうが、これに関しては実際に事故が発生してみないと分かりません。(過去に対応歴があればいいかもしれませんが)
結局のところ、何かあっても対応してくれる(その費用を見込んで販売している)メーカーや販売元の純正バッテリーを使用するしか選択肢はないのです。
純正バッテリーが高いと思われる方は多いと思いますが、そこに保険が掛かっているというようなものだと思えば納得していただけるのではないでしょうか?
最後に
いかがでしたでしょうか?急増する互換バッテリーの事故について、niteの事故防止啓発資料と電気用品安全法の観点から紹介してきました。
工事現場においても充電中の非純正バッテリーからの発火事例を聞くことがあります。施工管理として電動工具の点検時に確認するべき内容の1つですので理解を深めて安全管理をしましょう。ご家庭においても十分に配慮をお願いします。
参照サイト
独立行政法人製品評価技術基盤機構
「急増!非純正リチウムイオンバッテリーの事故~実態を知り、事故を防ぎましょう~」(https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2019fy/prs200123.html)
経済産業省
電気用品安全法(https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/topics.html)