【ゼネコンとサブコンの違い】建築設備の施工管理は本当に激務?~その特徴と実態~
「きつい」「やめとけ」・・・googleで「設備 施工管理」と打ち込むと最初に出てくるワードがこちらです。
現在も設備の施工管理をしている身としては悲しい事ですが、多くの同業者がそう思っているのは事実です。しかしもう十数年もこの仕事をしていると、これは半分正解で半分不正解であると断言できます。なぜなら私は現在激務でもないし、土日もきちんと休暇をとれています。
それは設備の施工管理は建築と比較してあるものが早く身につくためです。
ここではゼネコンとサブコンの施工管理は働き方がどう違うのか?紹介していきます。
キーワードは「現場代理人」と「裁量」です。それではどうぞ。
- 設備施工管理に従事している。
- 設備施工管理に興味がある。
- これから現場に配属される。
- 業界の実態を知りたい。
目次
建築現場の施工管理のイメージ
「現場で働く」「施工管理」というとどういったワードが浮かんでくるでしょうか?
- 激務
- 危険
- ダサイ
こういった所でしょうか?一般的に建築が好きという方以外は好んで飛び込んでこないかと業種かと思います。実際に否定はできません。土曜日はまだ完全に休日になっているとは言えず、命の危険も付きまとう。私は作業着のことを格好いいと思いますが、レストランなんかには気軽に入れないですよね・・・。
設備工事の施工管理
では建築設備の施工管理に絞るとどうでしょうか?建築現場において施工管理者が行う業務としては品質管理・安全管理・工程管理があります。基本であるこれらは建築工事と変わりません。
(ここでは予算管理は省きます。現場代理人についての記事で書かせていただきます。)
では何が違うかと言うと、その請負形態による裁量の程度だと思っています。
ほどんどの場合ゼネコンからの請負工事となり、ゼネコン社員の指示の下、現場で施工管理業務を行います。又はコストオンといって、設備が直請け(施主と直に契約)となりますがゼネコンが設備分の管理費用を見込む受注形態などのように、ゼネコン主体の現場がほとんどです。
そのためどんなに頑張ってもゼネコンが先に進んでくれないと設備も仕事になりません。建築現場で仕事を進めるに当たって「検討時」「施工時」「人員配置」で違いが出てきます。
- 安全、品質、工程管理をするのは一緒
- ゼネコンがメインで現場を動かすケースが多い
- 検討時、施工時、人員配置での違いに特徴が出る
検討時の違い
私は現場運営の中でこの時期が一番重要で人員やお金をかけてでも進めるべきだと考えています。
ですがどんなに先行して作図を進めようとしても建築図(平面詳細図・躯体図等)が出来上がっていないと設備も検討しきれません。せっかくの施工までの準備期間も上流工程が遅れた分、割を食います。
スタートダッシュをかけてくれる建築所長だと後も楽ですが、この時期にゴルフ三昧で現場ほったらかしの所長だと検討が遅れ、後工程が大変になります。
施工時の違い
先行する建築工事が終わらないと施工ができない上、作業の終わりが決まっています。まだまだ多くの建築施工担当者は設備を考えないまま建築工程を決めていることがあります。
すると職人さんの調整がつかなく、夜遅くまで残業作業する、不慣れな人を応援に呼ぶ、ということになってしまい万全の体制・体調で管理することが出来なくなります。
どうしても躯体工事・軽量鉄鋼・ボード業者の権限が強いので設備は主張しにくい慣習となっています。
特に試運転時期になると建築工事はクリーニング以外終わっている中、検査に向けて夜な夜な追い付かせないといけないため寝泊りすることもしばしば。
人員配置の違い
圧倒的に人がゼネコンより少ないので基本的に少ない人数で現場を回していかなければいけません。建築施工管理は物量が多いので分業されています。(躯体と内装等。)それに対し、設備は大型現場でない限りは基本的に全職種を担当し、その中で上司は指示、部下は雑務のような役割分担になります。
1人当たりの雑務による負荷も大きいです。設備は事務員さんを雇っている余裕はありません。
また建築施工管理は交代で休むことも可能ですが、設備はそもそも交代する人がいないので休める機会も少なくなります。(上司は打ち合わせなので部下が現場回すなど)
まとめると以下の通り
<ゼネコンとサブコンの施工管理の比較>
検討時
業務 | ゼネコン | サブコン |
---|---|---|
図面 | 自分たちのペース | ゼネコンありき |
施工時
業務 | ゼネコン | サブコン |
---|---|---|
工程 | 建築工事優先 | 隙間期間での作業 |
人員配置
業務 | ゼネコン | サブコン |
---|---|---|
人数 | 多い | 少ない |
業務分担 | 調整しやすい | 調整しにくい |
1人あたりの雑務 | 少ない | 多い |
休暇 | 取得しやすい | 取得しにくい |
設備主体の物件の場合
プラント、工場等の物件の場合では設備工事がメインとなるので逆に設備の方でスケジュールを決めてあげてください。特に試運転調整は調整事項が多くあり、十分な期間を確保することが大事です。
設備施工管理の残業時間は?実際どうなの?
転職サイトDODAで実施された「残業時間ランキング 2019」(https://doda.jp/guide/zangyo/)によると調査対象15,000人、105種別の中でなんと映えある第一位を獲得しました!・・・全くもって悲しい事態です。
ですが注意してください。こういった調査は「企業が実績として把握している残業時間=実際に支給されている残業時間」であってサービス残業は闇に葬られています。
表に出てきている数字でこれ、ということは「比較的暇な時期でもこの程度」と思っていただいて結構です。
設備の施工管理という職種は先にも述べたように、自分たちだけ頑張っていてもどうにもならない部分があるので仕事の調整がしにくく残業が増えてしまう傾向にあると思います。
私の経験から申し上げると、実際は自分で現場をコントロール出来るようになるまでは、平均100時間/月、ピーク時200時間/月程度というのが実態かと思われます。(もちろんそうでない方もいらっしゃいます。)建築の施工管理も会社によってはこのくらいかと思います。一番の理由としては土曜、祝日は現場が稼働しているため。ということが一番大きいかと思われます。その上で1日あたり2時間残業したとすると・・
土曜・祝日(5日×8時間=40時間)+1日2時間残業(25日×2時間=50時間)=90時間
あっという間に90時間になってしまいました。これからこの業界で頑張ろう、とこのブログを見ていただいている人には酷かもしれませんが、これが実態だと私は思っています。ただし、2024年から建設業にも残業規制がかかるようになり、業界の方も必死に体制を整えている所です。土曜日閉所の現場も増えてきているので今後に期待したいと思います。
設備施工管理の長所
良いこと無いじゃないか、と思った方が多くいらっしゃると思いますので、ここでは私が設備の施工管理を続けていてよかったと思える点についてお話します。
まず「建設設備の施工管理とは?」の記事でも記載したように、建物が好きな人にとっては一番近くで見ることが出来る職場である。ということ。そして
仕事の裁量を任されるようになる(現場代理人になる)のがゼネコンに比べ圧倒的に早い。
そして
自分の裁量で、人・もの・金を動かせるようになる。
現場代理人になれば責任面での負担もありますが、上手くこなせば自分のペースで働き方を調整しやすい職種だと思います。オフィスで決まったような働き方が性に合わない人にはうってつけです。
現場代理人という職務を通じて
- 人に気持ちよく動いてもらうためのノウハウ
- 経営者目線での仕事への取組み(サラリーマン目線からの脱却)
ということが他の職種より圧倒的に早く身に付きます。また裁量次第で休みも自分で調整できるようになってきます。例えば18時には必ず帰る人もいます。現場終わったら2週間程度の長期連休を取って海外に・・・有給休暇を使わず。という方も実際いらっしゃいます。
しかし何より設備機器を生かす瞬間というのはどんな現場でも苦労する分格別な感情が湧き上がります。建築設備とは建物にとって血液・神経という話をしたと思います。大袈裟かもしれませんが
建築設備を稼働させる=建物に命を吹き込む瞬間に立ち会う
それが出来る唯一の仕事といっても過言ではないと思っています。この瞬間は現場を納めた人間だけが味わえる至福の時間です。これが癖になってくると、これからも良いものを納め、多くの感動を味わっていきたいと思えるようになるでしょう。
- 早い時期から現場代理人になることができる。
- 現場代理人になるとゼネコンよりも大きい裁量で働ける。
- 現場代理人になることでサラリーマン目線の働き方からの脱却。
- 建物に命を吹き込む瞬間に立ち会える。
いかがでしたか?設備の施工管理とゼネコンとの違いについて紹介してきました。
なお今回触れていませんが、設備施工管理に関する給料・キャリアについては、また別の記事で述べていきたいと思います。