【実践編⑤】空調・衛生設備施工図の描き方 ~ダクト~
空調・衛生設備配管施工図の描き方として簡単な事例でオフィス専有部でのポイントを解説しています。今回はダクトについてスポットを当てていきます。
ダクトは空気を運ぶもの。ある程度は融通が利くので、その自由度に期待しすぎて基本を見落としてしまうケースを稀に見かけます。
物量がそれなりにある設備であるからこそ些細なことが大きな手直しに繋がりますので、ここで簡単な注意点・ポイントを覚えて効率的な現場進行を目指しましょう。
- 現場代理人として施工図を作図・または依頼する立場である
- 施工図を作成しても現場がうまく納まらない
- まだ施工図作成業務に慣れていない
- 我流で作図方法を覚えたので改めて勉強したい
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目次
ダクト抵抗に関する注意
ダクトルートを選定するにあたって納まり・性能共に重要になってきます。TFASを始め自動で静圧を計算するソフトも浸透してきていますが、過信しすぎてはいけません。
施工図段階でしっかり検討しておかないと試運転時に狙った風量が出ないということもありますので、表に見えない部分でもいくつか注意点がありますで挙げていきます。
抵抗係数はあくまで層流時の話
機外静圧計算を行う際、曲がりや拡大縮小などの局部抵抗を見込みます。これは局部抵抗係数に動圧を乗じたものとなりますが、この局部抵抗係数は実験値から求められているのはご存じでしょうか?
計算ソフトに登録されている数値やSHASEなどの参考図書の数値をそのまま信じてルート選定を行うと、複雑な曲がりや取り出しがあった場合に計算値以上の抵抗がかかる場合があります。
無理の少ない曲がりとしていきたいですが、納まり上どうしても・・・という場合もあるかと思います。その時は計算結果に掛ける補正率を多めにとったり、抵抗係数を類似の形状の大きい方とするなど工夫してみてください。
上図はあくまで考え方の参考イメージ図です。窮屈な納まりの場合のギリギリの計算結果の時は要注意です!
ダンパーの羽根の向きと位置に注意
「風の流れに注意してVD設置位置を検討しよう」の記事でも紹介していますが、曲がりの直前・直後のVDやFDなどの羽根のあるダンパー設置位置についても要注意です。
空気は目に見えないものですが、水と同じ流体です。直管部はダクト内を均一に流れているとしても曲がり部分はそうではありません。
曲がりに沿って均一に流れるのではなく、あくまでまっすぐ進もうとします。そのため曲がりの外側に流体が偏ります。インコースは密度が薄く、アウトコースは密度が濃いわけです。
その場合にVD等の羽根が偏った流体の流れを阻害するような位置にあると局部抵抗は一気に大きくなります。なにもない直線部分に設置する場合と比較して倍以上の抵抗となることもありますので設置位置や羽根の向き(ハンドルの位置)を調整して配置しましょう。
室内機SA系統は抵抗が等しくなるように
最遠端での風量を確保すればよい、というのは機外静圧計算で基本になってきます。しかしVDなどの風量調節機構がそれらの系統に備わっていない場合は抵抗の少ない制気口で風量が多く、最遠端が最も少なくなるのは分かるでしょうか?
今回のオフィスビルの隠ぺい型PACのSAなどは分かりやすい例で、室内機と制気口が近ければそれだけ多くのSAが供給されます。
制気口にも羽根が付いており風量調整できるのでは?という声が聞こえてきますが、吹き出し口直近で風量を絞ると今度は騒音値が大きくなってしまいます。
そのため各制気口からの風量バランスをとり、騒音を抑えるためにも各分岐の抵抗がなるべく等しくなるようにルート検討をしてあげてください。
試運転時にダクトをやり直したり、そういった手間を考えれば材料費なんて大したことはありません。
納まり上の注意
性能面と同時に施工的に注意しなければいけない点も多々あります。今回のオフィスビルの事例ではこれから紹介する内容について主に気を付けてください。
大型のダクトでは保温の工程にも配慮
OAやSAダクトを施工した後は保温の作業が待っています。この保温工事のタイミングがいつになるか?(協力会社によっても違いますよね?)想定して図面を描く必要があります。
例えば今回の事例だと排煙ダクトにGWを巻く作業がありますが、①梁貫通のSP配管を行い ②排煙ダクトを吊った後が保温のタイミングとしていますが、少しイメージしてみてください。
断面をみれば分かりやすいと思いますが、排煙ダクトの上部に保温を巻こうとするとSPとダクトの間に体を入れていかなくてはいけません。
その場合は離隔距離はいくつ必要でしょうか?今回は幅が500程度のダクトですのでそこまで体を入れこまなくても鋲やロールの施工はできるでしょう。
ですが、これが幅が700や1000になったら話は別です。体を完全に入れないと届かないし、反対側は大梁があって高所作業車が入らない・・・。するとどうしても保温作業で危険作業が発生します。
こういった場面を作らないためにも後工程までイメージしたルートとしましょう。
ひと工夫で消音効果も
こちらも施工ポイントの記事「ひと工夫で消音フレキの消音性能をアップ」でも紹介してますが、せっかく消音フレキシブルダクトを使用していても真っすぐ制気口まで接続した場合は消音効果は低くなります。
ダクト内面のGWに音をより吸収させるためにあえて曲がりを設けてみましょう。ちょっとしたひと工夫で思った以上の効果が得られます。
雨水の侵入に配慮
OA/EAに関わらず、外壁面に通じているダクトは室内側で一振り上げるようにしましょう。または十分な直線距離をとること。
荒天時や高層建物では例えOAであっても外から雨を伴う強風が吹きこんでくる場合があります。その際に室内側ですぐにダクトを下げるようなルートとなっている場合はその部分に水が溜まり、継ぎ手部分から漏水してきます。
外壁貫通部の止水と合わせて、それが破れた場合の2重の防止策を設けるようにしましょう。
搬入を見越したサイズに
意外と見落としがちなのが搬入です。仮設エレベーターに入りきらず、資材ヤードで角ダクトを解体してから載せるなんていうケースも稀にあります。
仮設エレベーターのダメ穴部分を施工する時期は本設エレベーターでの搬入になりますね?事前に資材を置いておければよいですが、本設エレベーターで運ばざるを得ないものがあるかどうか?そういった部分まで想定しながら作図をしていきましょう。
内フランジの場合はせいぜい500L
角ダクトを施工する上で内フランジを用いて接続する場面もあるかと思います。ダクトの外側であればフランジの近くに体を寄せればいいのですが、内フランジはダクト正面から手を入れないといけないため届く距離に限界があります。
せいぜい500L程度の奥行長さにしておかないとボルトの締め付けができません。ダクト業者さんの方で製作寸法は測るのが一般的かと思いますが、割り付けが変わってしまうことで当初想定の施工といかない場合もあります。
こういった部分も実際の作業をイメージしながら作図することを心掛けましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?一般的なオフィスビルのダクトの施工図を検討する上でのポイントをまとめてみました。もう一度確認すると
- イレギュラーな納まりでのダクト抵抗は計算では求められない
- 風の流れを意識して障害の少ないようなルートとする
- 機器の近くは風が出すぎる可能性があるので全体の抵抗のバランスをとる
- 後工程の保温を見据えたルートとする
- 雨水・搬入・消音対策など、ちょっとしたひと工夫を加える
こういったことになります。
納める設備によって様々ですが、注意点をいかに図面に反映させるかが大切です。詳細図を起こさなくても例えば外壁際の立ち上げなどは文字だけでも十分伝わります。
ダクトは特にその大きさの割に細かい調整が多く、その意図が現場でないがしろにされることもあります。施工する職人さんが注意点・施工図の意図に気づけるような図面を目指しましょう。