【実践編③】空調・衛生設備施工図の描き方 ~配管・ダクト全般~

施工図

機器やスペースを大きくとるダクト等の配置まで行いました。実際はある程度並行作業となりますが、続いて配管類の納まりを検討していきます。

一概に空調・衛生設備と言っても様々な種類があります。作図をするにあたり手当たり次第に検討しても良い納まりにはなっていきません。

ここでは機器のざっくりとした配置後に配管・ダクトを作図していく上で留意しておいて欲しいポイントを説明していきます。

「納まり図」と「施工図」は似て異なるものということをここで認識して欲しいと思います。

*図面検討しながらこの記事を描いているので例えば消音フレキシブルダクトをスパイラルダクトで記載していたり中途半端な状態もあります。最後はまとめる予定ですのでご理解いただければ幸いです。

こんな人におすすめ

  • 現場代理人として施工図を作図・または依頼する立場である
  • 施工図を作成しても現場がうまく納まらない
  • まだ施工図作成業務に慣れていない
  • 我流で作図方法を覚えたので改めて勉強したい

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「納まり図」と「施工図」

「納まり図」をとりあえず決められたスペース内に設備を納めただけの図面だとすると、これを効率よく施工するための図面を「施工図」と考えてみましょう。

例えばイメージになりますが、2つのパターンを比べてみます。

これはどちらも「納まって」います。ですが、実際施工をする場合にどちらが施工しやすいでしょうか?

施工性・順序・手直しのしやすさ・・・こういったことを意識して施工図を描いていきます。

順序を定めて作図をすることを心掛ける

皆さんは普段どういった意識で施工図を作成しているでしょうか?例えば設計図を載せて複線にしながら検討したり。作図順序は人それぞれあるかもしれません。

まずは納まっていないと話になりませんが、作図に大変な場合は施工でも大変な場合は多いです。手当たり次第に描きやすい順番で進めていくと思わぬところで詰まったり、修正に大幅な時間を要することになります。

本記事で紹介する図面は中規模な事務所ビルの専有部になりますが、こちらを参考に配管・ダクトの施工図の描き方を見ていきましょう。

天井内の上部から検討していく

先ほどのすみ分けイメージをもう少し具体的に見ていきます。実際には配線用のラックや照明器具・吹出口あたりもあり、ジグソーパズルではないですが限られたスペースにこれらを敷き詰めていきます。

その際にも手当たり次第敷き詰めるのではなく天井の上部から敷き詰めていきましょう。というのは天井上部では梁貫通スリーブが発生するため必然と納まりに優先順位が決まってしまいます。大梁のフトコロのスペースにどんどん敷き詰めていきましょう。

また最下部は器具の位置が後で変更が効くよう極力確保しておきます。オフィスビルであればできれば天井仕上げから300㎜程度はとりあえず不干渉地帯としておきましょう。(天井器具やダウンライトを考慮)

優先順位の高い設備から

前回までにおおまかな機器の配置と納まりに大きく影響する排煙ダクトの配置を行いました。

多くの人はこの後に勾配のつく配管のように納まり上制限のある配管を検討すると思いますが、ちょっと待ってください。もう一度ここで強調しておきますが、建築設備で重要なのは「納まり」より「機能」です。そして最も機能を優先しないといけない設備は人命に関わるもの。

というわけで今回の事務所においては勾配もの(空調ドレン:橙)は気にしつつも、スプリンクラー(紫)のルートの確保もざっくり行います。

こういったものを後回しにすることで機能を満足できなかったり、大変施工しにくい配管ルート(=危険作業)となることがよく見受けられます。

なお消火の専門会社が入る場合はそちらのVE案だったり思惑が絡みます。ガス配管がある場合はガス事業者の仕様・決められた納まりもありますので早い段階でルートの確認を依頼しましょう。

条件付きの配管を検討

配管はそれぞれ様々な制限がありますが、特に排水管や通気などの勾配が絡むものについては優先順位が高いです。なので次は勾配ものの配管から固めていきます。

必要な勾配は特記仕様の参考図書に則ったり、先方の仕様で数値が決められている場合もありますのでいち早く施工要領書で確定させるようにしましょう。(後で指摘をうけるとその後の調整が大変です。)

作図上では勾配を平面図上で表現しにくいので高さの記載を細かく行いながら検討するといいですね。CADによっては自動勾配付加機能もありますが、修正が面倒等ソフトの特性を踏まえつつ作図していきましょう。

どうしても勾配がとれないといった場合はPSの増設を依頼したりドレンポンプ方式を採用する等の調整します。

スリーブを確定させる

スリーブは一旦使えるものは使う前提で進めていきます。必要最小限にしたいのは設備も建築も一緒ですが、最終的に全体を描き終えた上で不要であれば削除する方向で。

冷媒管などのある程度自由度の高い配管もスリーブを使って納めてしまいます。まっすぐ配管が伸びた方が施工性も良いし、部材も少ない。ということは漏水・漏気のリスクも減るということです。施工範囲のすみ分けという面でも配管の上下が少ない方がシンプルです。

一旦スリーブを使用する範囲を固める

勾配ものはもちろんのこと加湿給水管の水抜き、給水管や空調配管での鳥居配管の確認、スプリンクラードレンも水たまりができないように考慮して位置関係を決めていきます。これらが複雑に交差せずシンプルな配管となるようなルートを目指してください。

まずはスリーブを固めよう

  • 一旦スリーブを使う前提で納めていく
  • 適切な勾配の確認
  • 配管の鳥居確認(場合によってはエア抜き・水抜きを設ける)
  • 複雑に交差しないシンプルなルートを検討

耐震支持・振れ止めを早めに検討

ある程度配管ルートが見えてきたらこの時点で耐震支持用の架台を検討しましょう。とりあえず設置場所のおおよその位置と形状を決めます。

【講義編②】空調衛生設備の施工図を描く上で大事にしたいこと」でも紹介している内容ですが、配管を施工した後に狭い天井に潜って危険作業で架台を採寸し、設置するという場面を多く見かけます。

そうならないためにも架台は躯体と同じということを意識して欲しいのです。実際に施工する場面では事前に架台が図面通りに設置できるか現調したり、調整代をどこかに設けたりしてください。面倒かと思いますが、それらは作業しやすい段階で然るべき準備を行うのは施工管理や職長の役割の一つです。

さて、こういった場所はどの順番で架台を設置しなければいけないでしょうか?
耐震支持は早めに抑える

  • 架台形状はある程度決まっている(建築設備耐震設計施工指針など)
  • 配管・ダクトの後から設置する場合は危険作業になりやすい
  • 架台=躯体くらいの認識で優先順位を考える

天井内下部の納まり

スリーブまで固めて上部の方を納めたらまとめに入っていきます。 ある程度融通の利くもの、 機器廻りの詳細的な部分で修正が面倒なものを検討します。

最後に検討するもの

  • 小口径のスパイラルダクト
  • フレキジブルダクト
  • 機器廻りの各種配管接続

このとき意識して欲しい点は天井内の下部に納まっているものを施工する時にはすでに上部の配管類があるということです。

例えば天井にアンカーを設置しにいく際に危険作業にならないか?工具を扱うスペースはあるのか?そういったことを考えながら混みあっていないルートを探しつつ全体を微調整していきます。

どうしても物理的に納まらなくて施工に制限ができてしまう場合もあるかと思います。その時は施工管理がしかりと現場で指示を出して調整していきましょう。

とはいえ、そもそもそういった条件になってしまう場所を避けることが一番。職人さんも迷わない=現地に呼ばれないことでもあります。

まとめ

いかがでしょうか?とりあえずここまでで施工を意識した納まりという視点で施工図の描き方を紹介してきました。

今回の作図について、もう一度すみ分けのイメージ図で確認します。どんなストーリーが見えてきますか?

各業者が錯綜しないよう進めるのも良いでしょうし、パワー不足な業者さんが予想されるならある程度作業が前後しても施工できるような納まりにしたり・・・その時々の条件に合わせてストーリーを図面上に反映させてみてください。

納まりと一緒に施工のストーリーを描く

  1. 機器をダクト・冷媒業者が吊る
  2. 排煙ダクトを施工する
  3. 保温は機器で合番しつつ排煙ダクトの保温
  4. スリーブ絡みで衛生・消火
  5. 冷媒・ダクトは合間を縫って
  6. 消音フレキシブルダクトはある程度配管が終わってから etc.

これが例えば6番のあとにもう一回衛生配管が発生するような事態だと現場も手間がかかり効率が悪くなります。保温もまとめて作業することが多いと思いますが上下作業が増え危険が伴います。安全作業を確保し、多少の前後も問題なく、スムーズに施工が進むようなストーリーを描きましょう。

なおここまでの図面を一旦3Dにするとこのような感じ。

今回の私の図面が絶対に正解というわけでもないです。現場には色んなしがらみがありますので何を重視するかというのは異なってきます。

ただ施工しやすくすることは安全にも予算にも直結してきますので共通で意識して欲しい部分ではあります。はじめは慣れないかもしれませんが、数をこなしていけば徐々に意図のある図面になっていくでしょう。

自分で施工図を描けばその意図を現場に反映しやすいですし、経験を積むことで人の描いた図面でもどんなストーリで施工するか見えてきます。

細かな技術的な項目はまた別記事で紹介していきますので、まずは今回の例を参考に手を動かしてみてください。