【実践編①】空調・衛生設備施工図の描き方 ~建築図の準備~

施工図

各種調整・打ち合わせが進めば実際に空調・衛生設備の施工図を描いていきます。実際は納まり図を作成する段階で並行作業で行いますが、まずは土台となる建築図の準備についてここで紹介していきます。

建築図の情報は設備にとって必要なものとそうでないものがあるので、情報を整理してあげないといけません。(ゴミ取りなどとも言います)

作図するのに、チェックするのに、施工するのに当たって余計な情報は混乱を招きます。いきなり配管類を描くのではなくしっかりと下準備を行いましょう。

こんな人におすすめ

  • 現場代理人として施工図を作図・または依頼する立場である
  • 施工図を作成しても現場がうまく納まらない
  • まだ施工図作成業務に慣れていない
  • 我流で作図方法を覚えたので改めて勉強したい

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全体構成・レイアウトを決める

まず全体の構成とレイアウトを決めます。

どんな情報を入れるべきか?現場の規模・用途・情報の多さによって図面のレイアウトも変わってきます。

例えば簡単な納まりかつ機器や器具の数も少ない小規模オフィス・マンションなどであれば、ある程度情報をまとめてしまった方が管理やチェックも楽でしょう。

そういったレベルなら建築の平面詳細図をそのまま利用してしまっても十分運用可能かと思います。

しかし大規模な物件や1フロアに部屋が多く存在している場合は機器や器具の種類も多くなりますし、工区毎に載せるリストを作り分けるような事では管理が煩雑になってしまいます。

そういった場合は施工や打ち合わせのシーンに合わせて図面やリストを作り分けた方が無難です。例えば

  1. 総合図から転用できるように「機器・器具のみの天井プロット図」を作成する
  2. 器具の仕様・用途はエクセルでリストを別に作って管理する
  3. 機器廻りの細かい納まりは見落として欲しくないから共通で入れる

など、作り手側(施工管理)と受け手側(職人あるいは監理者)双方にとって読みやすい図面となるような全体の構成と個別図面のレイアウトを考えましょう。

通り芯を決める

ざっくりなレイアウトを決めたら通り芯を確定させます。

一旦平面詳細図を載せて、通り芯の長さを調整します。通り芯はレイヤーを、Tfasであればシートを分けて編集モードを「表示」にしておくと便利です。

調整した通り芯だけだとこのような形になります。これで基準の出来上がりです。ここに躯体図や平面詳細図を載せ、随時差し替えていきます。

参考動画:レイアウト機能

ここでは説明しませんが、AutoCad・Tfas・Rebroなどを利用している方は「レイアウト」機能を活用しましょう。参考に「CADWe’ll Tfasの部屋」様の動画を紹介します。

やるべきことが分かっていても結局効率よく作図するにはテクニックが必要です。Tfasを使用されている方はぜひご覧になって下さい。

躯体図を記載する

通り芯を決めて図面の基準が決まったら躯体図を載せていきます。空調・衛生施工図ではそのフロアの天井配管・または床上の転がし配管について図面を見ながら施工します。

そのため最終的に表現する躯体情報は見上げが基準になります。ここで「見上げ」の情報といっても、どの躯体図を採用するか注意しなくてはいけません。

せっかく綺麗に図面を描けていても載せている躯体が違った・・・なんていう事になったら目も当てられません。

見上図・伏図・梁番号について

見上げ図・伏図(見下図)と図面名称が色々出てきますが、どの範囲を表現しているのか分からなくなることはありませんか?そういった時はあくまで躯体図は建築の躯体工事のための図面ということを思い出しましょう。

RC造で躯体を立ち上げていくのに壁や柱をまず建て込みます。次に梁底、スラブ底といった順番ですね。この時に使われるのが「見上図」になります。

梁底・スラブ底まで型枠が上がったら今度はその上に乗って梁やスラブの配筋を行います。この時に使われるのが「伏図」「見下図」です。配筋の立ち上がりもしておかないといけないので若干床上(1m程度)から下を見ている事が多いです。

そしてもう一点大事なのが「〇階の梁」といったらどこを指しているか?です。これは構造図で割り当てられている梁の番号を注意して見れば一目瞭然ですが、例えば「3階の梁」といったら3階のスラブを載せている梁になります。

つまり2階から見上げた時に見える梁は3階の梁ということを覚えておきましょう。梁は上階に行くにつれて小さくなっていきますが、ここを読み違えると納まっているつもりが実は梁が大きくてダメだった・・・なんてことに起こりえます。

以上躯体図の読み方についてのまとめは以下の通り

見上げ図 床伏図 違いのイメージ

なおS造の場合は立ち上がりに鉄骨柱しか無いので床伏図だけで完結することがほとんどになります。

不要な情報は消去する

躯体図を重ねていきます。そのままだと設備の施工図には不要な情報が多く載っていますので消していきます。

躯体図情報を整理

  • 梁記号⇒一旦残す
  • スラブ記号⇒ハッチングと凡例で分かるなら消す(煩雑にならない方で)
  • 開口等の記号⇒消す
  • 各種寸法⇒消す

一つ一つ消していくと大変なので、建築図のレイヤーを調べて効率よく消去していきましょう。

これである程度見やすくなりました。

梁情報の補足を記載する

施工図を描いていくに当たって逐一躯体情報を追っていっては時間が掛かってしまいますし、読み間違えを起こします。

そこで梁などの設備の納まりとよく絡む部分については補足情報を入れていきます。

今回は鉄骨図ですが、毎回ここから構造図を見ていくと間違う可能性も大です。押さえておくべきは梁下の寸法と梁成です。

梁情報を補足

  • 梁下高さ⇒梁下に配管が通るか確認できる
  • 梁成⇒スリーブのサイズの検討で必要

明らかにスリーブの通らない小梁などは細かく記載する必要はありませんが、納まりを検討するに当たって必要そうな箇所は記入しておきましょう。

図面検討以外でも、いざ施工中に変更がある場合や職人さんが図面の把握を行う場合に使用することもあります。

スリーブ設置可能範囲を記載する

スリーブの梁貫通のルールについては構造図の特記仕様書の部分に記載してあることが多いですが、一般的には「梁の端から○○㎜、かつ梁成の〇倍以内の範囲に開口を設けてはいけない」と記載してあります。

ここの範囲を押さえて図示しておくことで検討の手間も減りますので最初の段階で記載しておきましょう。

初めから建築図で反映してある場合もあります。

3DCADを使用している場合

TfasやRebroなどの3D機能を兼ね備えたCADを使用している場合、躯体情報を登録しておくことでさらに納まり検討が便利になります。

ただこの作業がなかなかに大変です。建築の情報を再度なぞりながら登録していかないといけないため時間が掛かります。

最近ではBIMによるフロントローディング(工程を上流側に前倒す方法)や鉄骨の製作工場でも3DCADの活用が進んできていますので、そういった方面から図面データ(IFCファイル)を取り寄せた上で加工する方法も検討してみてください。

躯体図まとめ

  • 見上図と床伏図の使い分けを適正に
  • 作図上と作業上で必要な情報は残し、使い分ける
  • 3D データを他から入手する手段も検討

平面詳細図を記載する

重ね合わせた平面詳細図を調整していきます。

不要な情報は消去する

壁の寸法や扉・窓記号など建築の施工に関わる情報は不要なので消去します。一旦全て消してしまって必要そうな部分を書き加えてもOKです。

平面詳細図情報を整理

  • 建具記号⇒消す
  • 部屋名称・仕上げ高さ等の情報⇒残す
  • 各種寸法⇒一部を除いて消す

施工の状況を見据えて残すべきものは残す

例えばLGSのスタットなどは一定のピッチで存在しており、コーナー部分や開口部などは移動・省略が不可能です。設備の施工には直接関係はありませんが、建築のこういった情報は消し過ぎないように注意しましょう。

特に納まりが厳しい場所については図面の段階でLGSのスタット位置と補強要領まで建築と調整しつつ作図します。

また施工している状況を考えることも大事です。天井配管を行っている時点では壁は仕上がっていませんが、トイレ詳細図を描き起こす場面おいては衛生器具の取り付けを想定する必要があります。壁やブースの内寸は押さえておくことも頭に入れておきましょう。

その時その状況によって必要な情報は変わってくるのです。

各種区画を記載する

各区画情報は確認申請図の副本を確認しながら記入していきます。(平面詳細図データに入っているケースもあります)

見落としの無いよう、太く目立つようにしましょう。

平面詳細図まとめ

  • 不要な寸法や記号は多いが、施工状況や作成図面によっては情報を残す(あるいは補足する)
  • LGSや石張りなど各種下地・補強の有無や位置を確認しておく
  • 防火区画・防煙区画の記入を忘れない

天井伏図を載せる

天井伏図は躯体図・平面詳細図より遅れて出てくることが多くなります。(建築の躯体工事に影響する範囲が小さいため)

天伏の変更によって総合図の段階からずれることもままにありますので、こちらも早い段階で建築・意匠設計に調整を依頼しましょう。

天伏図を受領したらまずは総合図や天井プロット図で再度調整をし、設備の天井器具位置を確定させます。

不要な情報は消去する

これまでと同様に不要な情報を削除して見た目を整えます。

器具などの天井面設置のものについては別途総合図や天井プロット図で建築含めて調整をします。

設備施工図段階での納まり検討や実際の施工において建築の目地情報などはあっても不要ですが、折り上げ天井の範囲や天井高さが切り替わる範囲などは押さえておくようにしましょう。

寸法や部屋名も含めてほぼほぼ不要です。

天井の補強情報を記載する

システム天井や特定天井については天井の中に建築の補強下地が存在します。事前に取り合い調整を行う事が重要です。「設備が優先」「建築が優先」とかそういった問題ではなく、どれも建物には重要な要素。

納まりが厳しければ設計に投げ返すなど早めに調整するようにしましょう。場合によっては3Dでの検討で表現できるようにしておいてもいいかもしれません。

なおシステム天井については設備の納まり図をメーカーに渡してあげればある程度は避けて配置してくれます。どうしても、というものは設備の方で調整ですね。

なお、作図時は必要な情報ですが、実際に配管類を描いたときに邪魔になるようでしたら非表示にするなど工夫しましょう。

天伏図まとめ

  • 天井目地により、照明・吹き出し口・点検口位置を微調整
  • システム天井や特定天井では天井補強状態を確認・取り合い調整
  • 各種寸法・部屋名称は不要⇒消す
  • 折り上げ天井や天井高さ切り替え範囲情報を残す

竪管を検討する場合は上下階の情報も

配管がフロアを上下する場合(PS竪管や衛生器具廻り)は上下階の躯体を確認しないといけません。

特に基準階直上・直下など用途が切り替わる時には大きく躯体形状も変わる事があります。衛生器具なら直下階、PS竪管なら全ての階で躯体に干渉していないことを確認していきます。

そのフロアだけ見ていると思わぬところで検討し直しになります。3D情報や細かく不要情報を消したり、というところまではしなくて良いですが、最低限レイヤー・シートの切り替えで表示させながら確認するようにしましょう。

最後に

これで一応は施工図を作成する準備ができました。各種建築図は薄め・暗め・細めの線設定にしましょう。あくまで設備の配管類が目立つように。そしてCAD上だけで判断せず、印刷したときの写り具合の方が重要です。

強調しすぎず、しかし重要な情報は落とさず調整する必要があります。「【講義編①】空調衛生設備の施工図を描く上で大事にしたいこと」でもお伝えしていますが、あくまで職人さんが見やすい・施工しやすい図面を目指します。

図面の描き方は会社によって、使用するCADによって変わってくるとは思います。今回紹介した内容も納得がいかない部分があるかもしれませんが、参考にしていただければ光栄です。