【準備編】空調・衛生設備施工図の描き方
ここでは空調・衛生設備の施工図を描く上でのポイントを紹介していきます。ですが、最初に一番大事なことについて触れておきたいと思います。
施工図を描く前に決めるものは決めましたか?
せっかく図面を描いても変更ばかりでは現場の手直しが頻発したり、そのための対応に時間を取られたり悪循環に陥ってしまいます。
施主や建築の進捗に大きく左右される設備工事ですが、決定していないことを施工図の不備の言い訳にしてはいけません。最低限この記事で紹介するものについては押さえた上で作図に取り掛かるようにしましょう。
- 現場代理人として施工図を作図・または依頼する立場である
- 施工図を作成しても現場がうまく納まらない
- まだ施工図作成業務に慣れていない
- 我流で作図方法を覚えたので改めて勉強したい
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施工図作成前における事前準備
施工図を描く以前に決定事項がまとまっていなければ、それはただの納まり図・参考資料となってしまいます。まずは次の検討が終わっているでしょうか?
こういったものが完了せずに描き出しても図面の手直しが頻発したり、いつまでたっても材料を発注できないような状態になります。加えて施工後にやり直しなんてことになれば目も当てられません。
施工図は現場をその通りに進めて欲しいという指示書です。その根拠が曖昧のままでも現場を進むのだとどうして思えるでしょうか?とにかく決めるべきことを決める・・・ここがスタートです。
- 施工図は現場を進めるための指示書
- 曖昧な部分をなくして初めて作図ができる
- 現場手直しが発生すると対応に時間を取られ悪循環
設計図書の整合確認
施工図作成に限った話ではないのですが、一番最初に行うのは設計図書の把握です。ここで「設計図」ではなく「設計図書」とした点に注意が必要です。
設計図以外にも施工のための情報は多く存在します。施工図を作成にするにあたり設計図だけでは読み取れない情報だったり、多くの資料同士の整合性を確認しておく必要があります。
- 工事を実施するために必要な図書で、設計の内容を示す書類
- 設計図・設計計算書・仕様書・現場説明事項書等
さらに設計図書を把握するのに見積書や見積に対する質疑応答書も確認しましょう。これらを見積参考図書と言います。これらに目を通すことで「発注者が何を求めているのか?」「どう図面を読み解いたか?」といった部分が見えてきます。
- 積算するにあたり、どう図面を読み解いたかを把握
- 見積書・見積条件書・質疑応答書等
まとめると設備の施工図を作成する前段階において、手元に揃えて確認しておくべき資料は次の通りです。
- 設計図(平面図・系統図・特記仕様書・機器表・工事区分表)
- 仕様書(特記仕様書以外にも発注者や自社の標準仕様書)
- 見積書・見積条件書・質疑応答書・契約書
- 各種法令
施工図を作成する上で技術的な知識が必要であることは当然ですが、何が必要とされているのか?施工する上でのストーリーが分かって初めてスタートラインに立つことができます。
各種書類も人間が限られた時間で作成したものです。その中には整合のとれていないものも多くあります。それらを確認し、最初の段階で調整していくことを心掛けてください。
変更事項の調整・確定
設計図書や見積参考図書を確認すると必ず矛盾しているものが出てくるはずです。こういったものを定例会議や設備分科会などで潰していきます。
矛盾ではないものの、こうした方が金額も手間もかからずに済むといった場合もあります。(VE案)往々にして変更要素は増額になることが多いため、減額案やVE案も踏まえて変更をかけていきましょう。
こういった変更で最も大事なものが「打合せ議事録」になります。後日言った、言わない、意図する事と違うといったトラブルを防ぐにあたり必ず作成しましょう。
受注者は弱い立場であることが多く、こういったトラブルに見舞われた際には自社負担で是正を行うケースがほとんどです。
議事録に残すまでもないようなちょっとした会話のやりとりでも、改めて確認メールを担当者に送るなどして自己防衛を図りましょう。
- 各図面・書類の不整合を潰していく
- 変更の過程で金額の増減が発生するためVE案を絡めて交渉
- 変更・確認内容は必ず打合せ議事録を作成する
- ちょっとした会話でも確認メールを送る等、自己防衛する
諸官庁協議
変更がまとまったら、または法令の運用上の問題で途中で判断できなくなった場合には諸官庁に協議に伺います。
空調・衛生設備に関わる協議は様々です。おそらく発注者や自社の書類にチェックリストが含まれるケースが多いと思われますが、主に次ようなものが挙げられます。
- 水道⇒本管の引込・給水装置・料金の減免について
- 下水道⇒雨水計画・公設桝の撤去/申請
- 消防署⇒消火設備・ガス
- 電力会社⇒高調波(電気設備にて取りまとめ)
- その他⇒騒音/振動計画等
いかに現場内で調整できていても行政がNOといえば施工を行う事ができません。施工前のしかるべき時期に確認を行うようにましょう。
ただし現場着任時点で設計協議が済んでいないケースもあります。そういった場合は本来設計者の業務ですので、協議自体は設計者に行ってもらいましょう。
総合図の作成
総合図は建築が作成した平面詳細図に空調・衛生・電気の設備機器や器具をプロットし、その配置・使い勝手等を確認するための図面です。
この段階になると具体的に意匠・構造・設備の施工に向けた意図の擦り合わせが出来るようになります。設計段階でも調整はしているでしょうが、より現実的な方針決定をここで行うことになります。
例えば空調設備で言うと、おおまかな納まりや点検口の存在を意匠に認識してもらうことも必要です。空調用のリモコンを集約したり使い勝手を確認します。
その他にも吹き出し口の位置が決まることによって気流の計算や騒音の確認が行えます。機器の位置が決まると振動の計算が行えます。エアバランスの確認も機器の位置や使い勝手を打ち合わせする中で決まってきます。
- 意匠・構造・設備の施工検討着手前の最終確認
- 設備では機器・器具の配置や使い勝手の確認を行う
- おおまかな納まりや点検口の存在を確認する
- 総合図の作成に伴い各種計算を行う
- 機器の搬出入・更新方法についても確認する
ここでも変更が入ることがよくありますので、簡単な納まり図を作成しつつ打ち合わせに臨んで検討・調整を進めましょう。
まとめ
いかがでしょうか?施工図を描く前に・全ての施工計画を立てるに当たって、まずやっておかなければいけない準備について紹介させていただきました。
我々は施工会社であって、施工で収益を上げなければいけません。その中でも労務の負荷が最も収益にも、安全作業にも直結してきます。
確認するべきものを確認しないことで現場が止まったり、手直しが増えると労務に多大な負荷がかかってしまいます。
別記事でも紹介していますが、施工図はいかに職人さんを迷わせない・手戻りをさせない図面を作成するかがポイントです。施工図に全ての段取りを集約させるのです。
繰り返しますが事前の検討、特に現場に着任してから最初の数か月が本当に勝負です。一番の現場の山は最初の検討にあります。
これらのことを心掛けて施工図に取り掛かりましょう。